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第15話 「エリカちゃんと猫ちゃん再び」 (挿絵あり)


焼き鳥を奪って逃げ切った猫ちゃんは、空き地の奥にある古い神社へ駆け込みました。

「にゃああああ!」

そこには、町中の猫たちを束ねるボスがいました。

大きな三毛猫。

鋭い目つき。

ふさふさの尻尾。

そして、ただの猫ではありません。

百年生きたという噂のある、化け猫さんでした。

「どうした、茶トラ」

「にゃあ! 金髪の小娘にチェーンソーで追い回されたにゃ!」

「チェーンソー?」

化け猫さんの目が細くなりました。

「猫のおやつ泥棒ごときで、チェーンソーを振り回すとは……許せぬ」

「いや、盗んだのはこっちにゃ……」

「細かいことはよい」

化け猫さんは、ゆらりと立ち上がりました。

「猫族の誇りにかけて、その小娘に思い知らせてやる」

翌日。

エリカちゃんはまたチェーン荘の軒先でおやつを食べていました。


挿絵(By みてみん)

今日のおやつは、たこわさ、塩辛、焼き鳥缶。

飲み物はイチゴミルクです。

「今日は猫ちゃん対策もばっちりよ」

「何したの?」

海斗君が聞くと、エリカちゃんは得意げにチェーンソーを掲げました。

「燃料満タン」

「対策の方向が違うよ」

そのとき、塀の上に大きな三毛猫が現れました。

「見つけたぞ、小娘」

「猫ちゃんがしゃべったわ」

「エリカちゃん、たぶん化け猫だよ」

化け猫さんは尻尾を揺らしました。

「我が配下を追い回した罪、償ってもらう」

「私のおやつを奪った猫ちゃんのボスね」

「そうだ」

「じゃあ、あなたが弁償してくれるの?」

「なぜそうなる」

「部下の責任はボスの責任よ」

化け猫さんは一瞬黙りました。

「……正論を言うな、小娘」

そして次の瞬間、化け猫さんの体がふわりと大きくなりました。

影が伸び、爪が光り、目が妖しく輝きます。

「にゃああああ!」

「来るわよ海斗君!」

「僕は見てるだけでいいかな!?」

化け猫さんが飛びかかりました。

エリカちゃんはチェーンソーを構えます。

ウイイイイイイイイイン!

けたたましいエンジン音と、化け猫さんの鋭い爪がぶつかりました。

火花が散ります。

「なかなかやるわね」

「小娘こそ、ただ者ではないな」

「私はか弱い小学二年生よ」

「どの口が言う!」

化け猫さんは分身しました。

一匹、二匹、三匹、十匹。

たくさんの化け猫が、エリカちゃんを囲みます。

「どれが本物かわかるまい!」

「全部斬ればいいのよ」

「発想が雑!」

エリカちゃんは回転するようにチェーンソーを振り回しました。

分身たちは次々に煙となって消えていきます。

最後に残った本物の化け猫さんが、背後から飛びかかりました。

「もらった!」

「甘いわ」

エリカちゃんは振り向きざまに一閃しました。

化け猫さんの姿が、真っ二つに裂け――

る直前。

化け猫さんはにやりと笑いました。

「ただでは終わらぬぞ、小娘」

ぼふん。

煙が弾けました。

「けほっ……何これ」

エリカちゃんが煙を払うと、化け猫さんはいませんでした。

代わりに、足元から小さな声が聞こえました。

「覚えておれ……この恨み、猫耳の呪いとして残してやる……」

「猫耳?」

海斗君がエリカちゃんを見て、固まりました。

「エリカちゃん……」

「何?」

「耳が……」

エリカちゃんの頭の上に、ぴょこんと金色の猫耳が生えていました。

さらに、腰の後ろにはふわふわの尻尾まであります。

「……え?」

エリカちゃんは耳を触りました。

ぴくん。

「動いたわ」

「動いたね……」

「海斗君」

「うん」

「似合う?」

海斗君は真っ赤になりました。

「……すごく、可愛いと思う」

エリカちゃんの顔も、少し赤くなりました。

「そ、そう」

物陰から、茶トラ猫が震えながら見ていました。

「ボス……負けた上に、敵を可愛くしてしまったにゃ……」

その夜。

チェーン荘では、猫耳エリカちゃんが鏡の前でくるくる回っていました。

「海斗君、これ一夜限りなの?」

「花子さんが言うには、化け猫の呪いは朝になれば解けるって」

「そう……」

「残念?」

「別に?」

エリカちゃんの猫耳が、ぴこぴこ動きました。

海斗君は小さく笑いました。

「残念なんだね」

「海斗君が可愛いって言ったからよ」

こうして、化け猫さんとの戦いは終わりました。

化け猫さんはいつか復活するでしょう。

けれど、その日町の猫たちは学びました。

エリカちゃんのおやつを奪ってはいけない。

そしてもう一つ。

猫耳エリカちゃんは、可愛いということを。


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