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全てを守りたい御曹司VS【黒血を継ぐ魔女】※乱入•妹

 

 どれだけ眠っていたのだろうか。

 ひよこ柄の毛布を被っていた。

 ひよこ女史、感謝します。

 そして不出来な弟子で申し訳ありません。


 俺はポケットからタブレット式携帯情報端末を出して、時間を確認する。

 日付は変わり、時間も昼を過ぎている。

 学校にはいるが、無遅刻無欠席ではなくなった。生徒の見本であるべき生徒会長が野宿して、学校をサボるとは……。ルーティーンもおろそかにしているから筋肉の調子も悪い。


「お目覚めかしら、御曹司」


 ………………。

 …………。

 ……。


 眠気まなこで何度も聞いた声音。

 自分の獲物だと言って何度も助けてくれた声音。

 何度も俺の前に現れては友人を切り、俺を苦しめた声音。


【黒血を継ぐ魔女】


 彼女は俺の生活の一部になっている。

 幼稚園、小学校、中学校と平日はおろか運動会や文化祭という行事にも平然と現れ、参観日にも居た。両親が行事に参加できないのは【黒血を継ぐ魔女】がいるからだ……と言ったのを覚えている。だが、俺が何を言っても、翌日には今みたいに微笑を浮かべて『お目覚めかしら、御曹司』と言ってくる。彼女が寝起きに現れても驚くことは無くなった。

 そして、今みたいに微笑から切ない表情を作る時は、


「私も御曹司のコーヒー豆から淹れるコーヒーは好きなのだけど……残念だわ」

「父さんが近くにいるのか?」

「そうなの」


 父さんが近くにいる。

 それだけで勇気をもらえる。

 だが、父さんが近くにいるという事は数多い暗殺者もいる。


「今日は特別な日だ。父さんは俺よりも妹に会いに来てる。ありがとう。妹ではなく俺を獲物にしてくれた事に感謝する」

「勘違いしないでね。学校の外にいる連中は兎も角、妹ちゃんを守ろうとする子供達をいたぶる趣味は私には無いの。それに【黒尻(こっけつ)】さんを相手にするには報酬額、この場合はお金になるのだけど……足りないのよ」

「それで俺か」

「正確にはこの畑。私の獲物を横取りしようとする暗殺者への警告も含めて、御曹司にも痛い思いしてもらうけどね」

「守るさ。妹が良いコーヒー豆だと言ってくれたんだから」


 燃やされる。

 コーヒー豆畑は燃やされるだろう。

 作り直しだな。一馬の淹れるコーヒーを飲めなくなったら妹は悲しむだろうな。

 それしか考えていなかった。

 だが、そんな考えは【黒血を継ぐ魔女】のこだわりから困惑に変わる。


 俺に致命傷を与えないのはいつもの事。今回の目的であるコーヒー豆畑に対して、ガソリンや灯油を使わず、爆弾を使わず、ククリ刀で枝を剪定するのみ。


「何故、燃やさない!」

「この広範囲のコーヒー豆畑を燃やしたら消防車が直ぐに来るじゃない。それこそ、学校に進入したい暗殺者に好機を与えるわ」

「そ、そんな……」

「私は、御曹司からの報酬をいただければいいし、総帥が自分の行動一つで息子や娘が暗殺者に狙われ、周りに被害が生まれる事を再認識してもらえればいいの。現実に苦心してもらえれば上等ね」


 お手玉するようにククリ刀で遊びだすと、いつもの微笑を浮かべて、値踏みするように俺を見る。


「御曹司。残念だけど、欠落があるあなたと盲目な妹ちゃんでは、総帥とは合わせられないわよ」

「コーヒー豆畑は作り直したらいい。父さんも俺も逆境に負けない。【黒血を継ぐ魔女】にやれる俺からの報酬は無い!」

「……? はぁ……まったく」


【黒血を継ぐ魔女】は値踏みをするような表情をキョトンとさせ、ため息を吐く。

 どうしたんだ?

 ククリ刀で遊ぶのも止めた。


「御曹司。私の話、ちゃんと聞いてた?」

「何をだ?」

「【黒血を継ぐ魔女】から、頑張ってきた御曹司と妹ちゃんにプレゼントをあげたつもりだったのだけど?」

「どういう事だ?」

「自分で考えなさい……〜」


 刹那、【黒血を継ぐ魔女】は振り返る。


 ドドドドン!!!!


 大口径弾が連発で撃ち出される轟音がコーヒー豆畑に響くと、ほぼ同時に大口径弾をククリ刀で弾き落とす金属音が鳴る。更に、ガトリング砲と大口径弾4連発が撃ち出される轟音が続くが、【黒血を継ぐ魔女】はガトリングの弾丸を躱しながら、大口径弾を弾き落とす。

【黒血を継ぐ魔女】に銃口を向けるバカは誰だ! ひよこ女史か!?


「制圧破壊前進でなければならない帝王では許されない制圧破壊逃亡! 女神は気まぐれだから許されるのだあぁぁぁぁ! この程度で死んでんじゃねえぞビッチ! がははははははははははははは!」


 ひよこ女史ではなく、元気すぎる妹だった。


 空菱さん、妹はどんな育ち方したんですか! どんな教育をしてきたんですか!

 槍や剣だけでなく、アンチマテリアルライフルやガトリング、レールガンまで撃ってますよ!

 凶器準備集合罪と銃砲刀剣類所持等取締法違反のオンパレード!!

 俺の妹は何をしたいんだ!


「筋肉オヤジ、一馬さんのコーヒーを守るついでに妹のコーヒーも守ってやったんだ! 貸しだかんな! 忘れんなよ!」


 妹よ。妹のためのコーヒー豆畑を妹が破壊しているのだが。自分で自分の好きなコーヒーを飲めなくしているのを理解していないのか?

 貸しと言われても、コーヒー豆の木がアンチマテリアルライフルの弾丸で穴が空き、ガトリングで傷つき抉られ、電撃で焼け、火炎放射器で燃えている。

 妹は守っていたつもりかもしれないが、【黒血を継ぐ魔女】がコーヒー豆畑を守ってくれていた。


 とりあえず、妹は一馬のコーヒーを守りたかったのだ。それ以上は、お馬鹿な妹のお馬鹿な部分しか露見しないため考えない方がいい。


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