第1話「静かな日常の中で」
ブラックホール編での激闘から数ヶ月、レンたちには、久しぶりに穏やかな日々が訪れていた。
「零崎殿、本日の議題は、銀河連邦内の資源配分についてです」
ヴェルミナが、資料を手に、レンの執務室を訪れる。
「分かりました。確認します」
銀河連邦の統括者として、レンは、日々の統治業務にも、真摯に向き合い続けていた。
だが、統治業務の傍らで、レンは、独自の研究も、静かに続けていた。
「レン、また夜遅くまで、研究してたのか」
ガイウスが、呆れ半分に声をかける。
「うん……関係性を理解する力について、もう少し、深めておきたくて」
ゼロ号を失ってから、レンの研究は、単なる物理的な強化を超え、より根源的な「繋がり」への理解へと、その軸足を移しつつあった。
「無理はするなよ」
「分かってる。ありがとう、ガイウス」
そんなある日、レンの元に、思いがけない来訪者が現れた。
「零崎殿、竜族の紅蓮様が、お見えになっています」
「紅蓮様が?」
レンは、驚きながら、応接室へと向かった。
「久しいな、レン」
紅蓮は、以前とは異なる、穏やかな表情を浮かべていた。
「紅蓮様、お久しぶりです。今日は、どのようなご用件で」
「そなたが、宇宙全体を巻き込む大きな戦いを経験したと聞き、様子を見に来た」
紅蓮は、静かに続けた。
「火竜山の復興、その後も順調に進んでおる。竜族一同、そなたへの感謝の念は、変わらぬぞ」
「ありがとうございます」
「それに」
紅蓮は、僅かに微笑んだ。
「そなたの歩む道、これからも見届けさせてもらうつもりじゃ。……ありんす言葉も、大分板についてきただろう?」
「はい、いつも心強く感じています」
こうした、かつての仲間たちとの再会も、レンにとって、大切な心の支えとなっていた。
そんなある日、宇宙管理AIから、久しぶりの通信が届いた。
『レン、息災か』
「はい、おかげさまで」
『貴殿に、伝えねばならぬことがある』
宇宙管理AIの声には、これまでとは異なる、静かな緊張感が込められていた。
『この宇宙の外側――高次元の階層について、新たな動きが観測された』
「新たな、動き……?」
『詳細は、まだ不明だ。だが――貴殿の“理解する力”が、いよいよ、この宇宙の枠組みそのものと向き合う時が、近づいているのかもしれぬ』
その言葉に、レンは、静かに、しかし確かな決意を新たにした。
(第2話へ続く)




