第6話「高次元存在との邂逅」
都市の一角から放たれた光の中から、これまで見たことのない、幾何学的でありながら、どこか流動的な輪郭を持つ存在が、静かに姿を現した。
『……ようやく、直接語りかける機を得た』
その声は、これまで出会ったどの存在とも異なる、多層的な響きを持っていた。
「あなたが……高次元からの干渉者、ですか」
レンは、緊張しながら問いかけた。
『干渉者、という表現は、些か一方的かもしれん』
その存在は、静かに応じた。
『我々は、貴殿らの宇宙を内包する、より高次な階層に属する者だ。此度の“干渉”は、貴殿らの宇宙が、自然な摂理の中で、我々の階層へと“浸食”しつつあることへの、対応に過ぎない』
「浸食……? どういう意味ですか」
『貴殿の力――理解に基づき、際限なく可能性を押し広げていく性質。それは、貴殿らの宇宙の枠組みそのものを、徐々に押し広げつつある』
その言葉に、レンは、思わず息を呑んだ。
「俺の力が……この宇宙の外側にまで、影響を及ぼしていた、ということですか」
『左様。貴殿が物理法則そのものへの強化を成し遂げたことで、貴殿らの宇宙は、これまでの“境界”を超えようとしている』
宇宙管理AIが、静かに口を挟んだ。
『それは、貴殿にとって、脅威なのか。それとも――』
『どちらとも言えぬ』
高次元の存在は、静かに答えた。
『我々にとって、これは前例のない事象だ。故に、我々は、貴殿らの宇宙の“成長”を、慎重に見極める必要があった』
「見極める……つまり、俺たちを、試していた、ということですか」
『その通りだ』
レンは、これまでの経緯を思い返した。虫族連合、機械文明、そして今回の高次元の存在――結局のところ、レンが積み重ねてきた「理解」の姿勢そのものが、常に問われ続けてきたのだと、改めて実感した。
「俺たちの宇宙は、これから、どうなるんでしょうか」
『それは、貴殿次第だ』
高次元の存在は、静かに続けた。
『貴殿がこれからも、理解を重んじ、力を独占せず、他者と共に歩む道を選び続けるのであれば――我々は、貴殿らの宇宙の“成長”を、見守り続けるだろう』
「もし、そうでなければ?」
『その時は――我々は、貴殁らの宇宙の境界を、再び閉じることになるだろう』
その言葉には、絶対的な重みが込められていた。
レンは、深く息を吸い込んでから、静かに、しかし確かな決意を込めて答えた。
「約束します。これからも、理解を重ね、皆と共に歩んでいきます」
その言葉に、高次元の存在は、しばらく沈黙した後、静かに応じた。
『……良かろう。貴殿の言葉、しかと受け取った』
こうして、レンたちは、宇宙そのものの存在に関わる、最大の危機を、対話によって乗り越えることに成功した。
だが、この対話を経て、レンの中には、これまでとは異なる、新たな問いが芽生え始めていた。
(俺の力は……この宇宙の枠組みすら、変えてしまう可能性がある。それを、俺は、正しく使い続けられるんだろうか)
(第7話へ続く)




