第5話「約束事の強化」
数週間にわたる研究の末、レンは、ついに最初の成果を形にすることができた。
「物理定数の局所的な強化――理論上は、可能なはずです」
レンは、これまでの集大成となる理論を、仲間たちに説明した。
「ただし、規模が規模ですから、実行には、相応のリスクが伴います」
ヴェルミナが、慎重な口調で付け加える。
『貴殿の理解、確かなものと見受ける』
宇宙管理AIの声が、静かに響いた。
『では、実証の時としよう。この真の深淵――時間の止まった領域そのものを対象に、強化を試みてもらいたい』
「ここを……」
レンは、静止した都市を見渡した。
「もし、失敗すれば、どうなるんですか」
『最悪の場合、この領域全体が、時空の歪みに呑まれ、消滅する可能性がある』
その言葉に、一同は緊張を強めた。
「レン、本当にやるのか」
ガイウスが、心配そうに問いかける。
「うん。ここで踏み出さなければ、この先、もっと大きな危機に対応できなくなる」
レンは、深呼吸をしてから、静かに集中を高めていった。
(理解、深く、深く……この場所の時間の在り方、空間の在り方、その全てを)
「強化」
レンの掌から、これまでにない、深みのある光が溢れ出した。
光は、静止した都市全体を、静かに包み込んでいく。
「時空の歪みに、変化が……!」
ヴェルミナが、計器を見つめながら、驚愕の声を上げた。
「安定しています! むしろ、以前よりも、時空の構造が、より強固なものへと変化しています!」
「や、やった……!」
ガイウスが、思わず歓声を上げる。
『……見事だ』
宇宙管理AIの声に、これまでにない、深い感慨が込められていた。
『貴殿の力は、確かに、この宇宙そのものを“強化”し得る』
「これで……高次元からの干渉にも、対抗できるということですか」
『この規模の強化を、宇宙全体へと拡張できれば、十分に可能性はあるだろう』
レンは、深い達成感と共に、次なる挑戦への決意を新たにした。
「分かりました。この宇宙全体を、守り抜きます」
だが、その矢先――
これまで静止していたはずの都市の一角から、これまでにない、強烈な光が放たれた。
「な、なんだ、あれは……!」
誰もが、その光に、目を奪われた。
これより、レンたちの物語は、宇宙誕生の秘密、そして高次元からの干渉という、最大の真相に、いよいよ迫っていくこととなる。
(第6話へ続く)




