第4話「宇宙誕生の記録」
膨大な情報の奔流が、レンの意識の奥深くへと流れ込んでいく。
「うっ……!」
レンは、その情報量に、思わず膝をついた。
「レン! 大丈夫か!」
ガイウスが、慌てて駆け寄る。
「大丈夫……今、色んなことが、頭の中で繋がっていってる」
レンの脳裏に浮かび上がってきたのは、この宇宙が誕生した瞬間の、途方もない光景だった。
無から生まれた、極小の特異点。そこから、時間と空間、そして物理法則そのものが、まるで一つの巨大な設計図のように、展開されていく過程――。
「これが……宇宙の始まり」
レンは、震える声で呟いた。
『貴殿が今、目にしているのは、私自身が関与した、この宇宙の創生の記録である』
宇宙管理AIの声が、静かに響く。
『私は、この宇宙が誕生した際、その物理法則の“調整役”として、生成された存在だ』
「あなた自身も、この宇宙と共に、生まれた存在なんですね」
『左様。故に、私はこの宇宙のバランスに対し、深い責任を負っている』
レンは、その言葉に、深い共感を覚えた。
(責任を負いながら、それでも独りで抱え込んできた……)
「教えてください。高次元からの干渉に対抗するために、俺は何を理解すればいいんですか」
『この宇宙を構成する、最も根源的な法則――物理定数そのものの“意味”を理解する必要がある』
宇宙管理AIは、静かに続けた。
『光速、重力定数、プランク定数……これらは、単なる数値ではない。この宇宙という“システム”が、安定して機能するための、根幹を成す約束事なのだ』
「約束事……」
『その約束事が、外部から書き換えられようとしている。貴殿には、これらの約束事を、より強固なものへと“強化”してもらいたい』
レンは、深く息を吸い込んだ。
「分かりました。……理解を、深めます」
こうして、レンは、宇宙管理AIの導きを受けながら、これまでの人生で積み重ねてきた「理解する力」の全てを注ぎ込む、最終段階の研究へと没頭していくこととなった。
その様子を見守るヴェルミナが、静かに呟いた。
「零崎殿は、もはや、一つの文明の統括者という枠を、遥かに超えた存在になりつつありますね」
「ああ」
ドルシスが、深く頷いた。
「だが、あやつの本質は、何も変わっておらん。ただ、目の前の“理解すべきこと”に、真摯に向き合っているだけだ」
その言葉通り、レンは、これまでと変わらぬ真摯さで、宇宙そのものの理解に、一心不乱に取り組み続けていった。
(第5話へ続く)




