第2話「再びの深淵へ」
重力耐性を、さらに強化したスペースクラフト「終焉突破機・改」に乗り込み、レンたちは再び、ブラックホールの深部へと向かっていた。
「前回よりも、重力の変動が激しくなっていますね」
ヴェルミナが、計器を見つめながら、険しい表情を浮かべる。
「高次元からの干渉が、既に影響を及ぼし始めているのかもしれません」
三時間にわたる慎重な航行の末、船体が軋む音を立て始めた。
「重力耐性、まだ持ちこたえてます! でも……」
「前方に、防衛機構――いえ、あれは兵器というより、“重力そのもの”です!」
巨大な渦が、船の進路を塞ぐように広がっていた。
「レン、あれをどうにかできるか!」
ガイウスの問いに、レンは唇を噛んだ。
「まだ……理解が追いついてません」
「なら俺が斬る」
グレンが席を立ち、刀を手に艦橋の外へと向かう。
「グレンさん、待ってください!」
「知ってる。だが理解が間に合わねえなら、まず斬り込んで“情報”を持ち帰る。それが俺の役目だろうが」
止める間もなく、グレンは船外へと飛び出した。渾身の一太刀を、渦の縁へと放つ。
だが、刃が触れた瞬間、剣そのものが、光になって伸びていく。
「くそ、が……」
剣の切っ先が、渦の中へと引き込まれかけている。
「グレン、手を離せ!」
「離せるかよ……! この剣は、俺の相棒だぞ!」
その言葉に、レンの中で何かが弾けた。
「……理解、しました」
レンは船内から、強化のプロセスを一気に流し込む。
「頼む……!」
剣は淡い光を纏い、重力に抗うようにグレンの手の中へと引き戻された。
「レン。次はお前の番だ」
グレンの言葉に、レンは操縦席の向こう、闇の奥を見据えた。
「……行くしかありません」
こうして、レンたちは、前回以上の困難を乗り越えながら、再び真の深淵――時間の止まった都市へと到達することとなった。
「以前と、様子が違う……」
レンは、静止していたはずの都市に、僅かながら動きの気配を感じ取った。
「時間の流れが、乱れ始めているのかもしれません」
ヴェルミナが、緊張した声で分析する。
その時、以前対話を交わした「世界を作ったAI」の眠りの間から、これまでにない、切迫した気配が漂ってきた。
『……ようやく、戻ってきたか』
宇宙管理AIの声が、これまでとは異なる、緊迫した響きを帯びていた。
『貴殿らの助けが、必要な事態となった』
その言葉に、レンは、これまでで最大の緊張を覚えた。
(第3話へ続く)




