第9話「宇宙の外側」
「宇宙の外側から、エネルギー反応……そんなことが、あり得るんですか」
レンの問いに、集合意志が、慎重な口調で応じた。
『我々の理論体系においても、宇宙の“外側”という概念は、これまで想定の範囲外であった』
「深淵の管理者は、何か知っているでしょうか」
「既に、問い合わせを行っています」
ヴェルミナが、通信記録を確認しながら答える。
程なくして、深淵の管理者からの返答が届いた。
『我々もまた、その可能性については、古くからの伝承としてのみ、耳にしてきた』
深淵の管理者の声が、静かに響く。
『この宇宙そのものが、より高次元の“何か”によって内包されている、という説だ。だが、これまで、その実在を示す明確な証拠は、確認されていなかった』
「今回の反応が、その証拠になり得る、ということですか」
『可能性としては、否定できない』
レンは、拳を握りしめた。
「もし本当に、この宇宙の外側に、何か存在するのだとしたら……」
「それは、これまでのどの脅威とも、次元の異なる話になるかもしれません」
ヴェルミナが、険しい表情で続けた。
この報告を受け、レンは、これまでの物理法則への強化研究を、さらに加速させることを決意した。
「物理法則そのものへの理解を、より深めることが、この未知なる領域への備えにも繋がるはずです」
「賛成だ。だが、レン、無理はするなよ」
ドルシスが、静かに声をかける。
「これまでの挑戦とは、比較にならないほどの、困難な道になるだろう」
「分かってます。でも――」
レンは、真剣な眼差しで続けた。
「これまでも、理解できないことなんてない、そう信じて、一つ一つ乗り越えてきました。今回も、きっと同じです」
その言葉に、仲間たちは、それぞれの想いを胸に、レンを支える決意を新たにした。
数ヶ月にわたる研究の末――レンは、ついに、物理法則そのものへの、本格的な強化理論を確立するに至った。
「光速、重力、空間……それぞれの概念を、対象として明確に“理解”できれば、強化は可能です」
レンは、これまでの集大成となる理論を、仲間たちに説明した。
「試してみましょう。まずは、小規模な実証実験から」
こうして、レンたちは、これまでの人生で積み重ねてきた「理解する力」の全てを賭けた、最終段階の挑戦へと足を踏み入れていくこととなる。
宇宙の外側という、未知なる領域の存在を胸に、レンの物語は、いよいよ、その最終章へと向かっていくこととなった。
(第10話へ続く)




