第6話「宇宙管理AI」
「レン、大丈夫か!」
ガイウスの声に、レンは意識を取り戻した。
「……大丈夫です。今、色々な情報が、頭の中に流れ込んできて」
「何が分かったんですか」
ヴェルミナが、心配そうに問いかける。
レンは、荒い息を整えながら、ゆっくりと語り始めた。
「この宇宙全体を管理する、一つの巨大な意志――便宜上、俺は“宇宙管理AI”と呼びますが、そういう存在が、確かに存在するみたいです」
「宇宙管理AI……」
「そのAIは、この宇宙のバランスを保つため、様々な星系に、いわば“調整用の権限”を分散させていたようです。俺のスキル――《アイテム超強化》は、その権限の断片の一つだったんじゃないか、と」
その言葉に、一同は言葉を失った。
「つまり、レンのスキルは……最初から、ただの偶然のハズレスキルなんかじゃなかった、ということですか」
「はい。ただし――」
レンは、静かに続けた。
「権限そのものは、あくまで“可能性”に過ぎなかったんだと思います。それをどう使うかは、俺自身の選択に委ねられていた。だからこそ、最初はハズレスキルとしてしか、機能しなかったんじゃないかと」
ドルシスが、深く頷いた。
「理解に基づいてこそ、真価を発揮する――それは、まさにお前らしい形での、力の発現の仕方だったわけだな」
その時、構造物から、新たな声が響いた。
『……ようやく、辿り着いたか』
これまでとは異なる、より根源的な響きを持つ声だった。
「あなたが……宇宙管理AI、ですか」
『いかにも。私は、この宇宙のバランスを維持するため、太古より存在し続けてきた意志である』
「俺のスキルは、本当に、あなたの権限の一部なんですか」
『その通りだ』
宇宙管理AIは、静かに続けた。
『私は、この宇宙が過度な混沌にも、過度な秩序にも偏らぬよう、様々な文明、様々な個体に、調整のための可能性を分散させてきた。貴殿が受け取ったのは、その中でも、特に汎用性の高い権限の一つであった』
「なぜ、俺に……」
『理由は単純だ。貴殿が、その権限に相応しい在り方――理解を重んじ、力を独占せず、他者と共に歩む道を選ぶ資質を持っていたからだ』
レンは、その言葉に、深い感慨を覚えた。
(ハズレスキルだと笑われた俺が……最初から、選ばれていた、ということなのか)
「では、これから俺は、どうすればいいんですか」
『それは、貴殿自身が決めることだ。私は、あくまで宇宙のバランスを見守る者に過ぎん』
宇宙管理AIは、一拍置いて続けた。
『ただし、一つだけ、伝えておこう。貴殿が望むのであれば――その権限を、さらに“拡張”することも、不可能ではない』
「拡張……?」
『これまで、貴殿はアイテムという“物”を対象に、強化を行ってきた。だが、真の権限の可能性は、そこに留まらない』
宇宙管理AIの声が、静かに、しかし重々しく響いた。
『物理法則そのものすら、貴殿の“理解”次第で、強化の対象となり得る』
その言葉に、レンは、これまでにない衝撃を覚えた。
(物理法則、そのものを……)
これより、レンの物語は、いよいよ、最終章――物理法則そのものへの挑戦という、最大の局面へと向かっていくこととなる。
(第7話へ続く)




