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強化倍率∞(インフィニティ)~武器しか強くならない俺が、気づけば○○していた~  作者: 伝説の男前
第7巻 宇宙戦争編(後編)

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第2話「防御の理解」

「触手状の機構、再接近してきます!」


 ヴェルミナの報告に、レンは即座に反応した。


「装甲の重力耐性を、局所的に最大まで引き上げる!」


 レンの強化を受けたスペースクラフトの装甲が、迫りくる触手の一撃を、かろうじて弾き返した。


「くっ……これが、ブラックホール文明の技術力か」


 ガイウスが、船体の揺れに耐えながら唸る。


「ゼロ号、敵の攻撃パターン、解析できるか?」


『解析中です、マスター……! 通常の物理法則とは異なる、重力そのものを操作した攻撃のようです!』


「重力を、操作……」


 レンは、額に汗を滲ませながら、必死に理解を深めようとした。


(これまでの装甲強化とは、根本から違う。単純な硬さや強度じゃなく、重力そのものへの耐性が必要になる)


「グレンさん、ここは俺が対応します。少し時間を稼いでもらえますか」


「おう、任せろ」


 グレンは、刀を構えながら、船外へと飛び出す準備を始めた。


「危険です、グレンさん!」


「心配すんな。理解するまでの繋ぎくらい、俺の役目だろうが」


 グレンは、不敵な笑みを浮かべながら、迫りくる触手へと立ち向かっていった。


 船外に飛び出したグレンは、渾身の一太刀を、触手の一本へと叩き込んだ。


 だが――刃が触れた瞬間、剣そのものが、光になって伸びていく。斬撃の軌跡が、まるで空間ごと引き伸ばされるように歪み、消えていく。


「なっ……」


 グレンの手の中で、剣が徐々に重力に「吸われて」いく。


「グレンさん!」


 レンが叫ぶと同時に、通信越しに映るグレンの表情が、初めて余裕を失う。


「くそ、が……これが、“斬れないもの”ってやつか」


 剣の切っ先から刀身の半ばまでが、既に渦の中へと引き込まれかけている。


「グレン、手を離せ! 剣ごと持っていかれるぞ!」


 ガイウスが叫ぶ。だがグレンは、歯を食いしばりながら剣を離そうとしない。


「離せるかよ……! この剣は、俺が大陸統一した時から、ずっと連れ添ってきた相棒だぞ!」


 その言葉に、レンの中で何かが弾けた。


 道具を、相棒だと言った。己の力だけを信じてきたはずの男が、最後の瞬間に、道具への想いを口にした。


「……理解、しました」


 レンが小さく呟く。


「グレンさんの剣が“斬る”んじゃない。あの重力場は、“引きちぎる”力なんだ。だったら――引きちぎられないように、剣自体を“繋ぎ止める”方向に強化すればいい!」


 レンは船内から、強化のプロセスを一気に流し込む。対象は、グレンが握る剣そのもの。


 剣身に走る歪みが、一瞬止まる。次の瞬間、剣は淡い光を纏い、重力に抗うようにグレンの手の中へと引き戻された。


「……は」


 グレンが荒い息を吐きながら、剣を握りしめる。


「おい、道具野郎。今、何をした」


「剣を、“繋ぎ止める”ように強化しました」


 通信越しに、グレンが笑う声が聞こえた。


「はっ……はは、そうかよ。お前、俺の剣の“心”まで理解しちまったのか」


 彼はゆっくりと船内へ戻りながら、刀を鞘に納める。


「もう一つ、分かったことがある。己の力だけを信じてきた俺の剣も――結局は、誰かに“信じてもらう”ことで、本当の意味で強くなるんだな」


 艦橋に戻ったグレンは、小さく笑った。


「レン。次はお前の番だ。あの渦の向こう、本当の意味で“理解”できるのか?」


 レンは、操縦席の向こう、闇の奥を見据えた。


「……行くしかありません。俺たちの理解が、まだ足りているうちに」


(第3話へ続く)


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