第4話「新たな来訪者」
虫族連合を撃退した後の宇宙空間には、戦いの傷跡を癒すかのような、束の間の静けさが訪れていた。
「零崎殿、集合意志より、正式な祝辞が届いています」
ヴェルミナが、通信記録を読み上げる。
『貴殿らの武勇、そして戦術眼、高く評価する。虫族連合の脅威に、単独でこれほど対処し得たことは、我々の想定を超えるものであった』
「ありがとうございます」
レンは、疲労を滲ませながらも、安堵の表情を浮かべた。
「ガイウス、皆、怪我はない?」
「ああ、艦隊の被害も、想定より遥かに軽微だった。全部、お前の強化のおかげだよ」
ガイウスが、力強く肩を叩いてくる。
だが、この平穏は、長くは続かなかった。
「零崎殿、緊急事態です」
ドルシスが、珍しく切迫した様子で、指揮所に駆け込んできた。
「どうしましたか」
「観測班が、星系の外縁部に、新たな未確認信号を捕捉した。虫族連合とは、明らかに異なる質の信号だ」
レンは、緊張しながら、モニターへと視線を移した。
「解析、急いでください」
『了解であります、マスター』
ゼロ号が、信号の解析を開始する。程なくして、その結果が表示された。
『解析完了。信号の発信源は、極めて高度な演算能力を有する、単一の知性体と推測されます』
「単一の知性体……アルゴス集合体とは、違うものですか」
「集合意志とも、明確に異なるシグネチャです」
ヴェルミナが、険しい表情で分析を続ける。
「もしかすると――これまで、この宇宙のどの文明とも接触したことのない、未知の超文明かもしれません」
その言葉に、指揮所全体に、緊張が走った。
『警告。当該知性体、貴星系への接近を開始した模様』
集合意志からの緊急通信が、指揮所に響いた。
『我々の分析網でも、正体を完全には把握しきれていない。あらゆる可能性を想定し、慎重な対応を求める』
「分かりました」
レンは、拳を握りしめながら、モニターに映る、未知なる信号の航跡を見つめた。
「これまでとは、質の違う相手、ということですね」
「はい。虫族連合のような、数の暴力とは異なる、根本的に理解の及ばない存在である可能性があります」
ヴェルミナの言葉に、レンは静かに頷いた。
「なら、いつも通りだ。まずは、理解することから始めよう」
その決意を胸に、レンたちは、未知なる来訪者との、新たな対峙へと向かうこととなった。
――そして数日後、その存在は、ついに姿を現した。
「あれは……」
モニターに映し出されたのは、これまで見たどの艦艇とも異なる、有機的でありながら幾何学的な、不可思議な構造を持つ、単独の巨大な物体だった。
『初めまして、地球外知的生命体よ』
響き渡った声には、これまで出会ったどの存在とも異なる、底知れぬ深みが感じられた。
『我は、この宇宙における秩序を見守る者。……貴殿らの在り方、興味深く観察させてもらっている』
レンは、緊張しながらも、静かにその声に耳を傾けた。
この出会いこそが、レンたちの物語を、さらに壮大な次元――宇宙の真理そのものへと近づけていく、重要な転機になろうとしていた。
(第5話へ続く)




