第3話「五十万隻の脅威」
「五十万隻……銀河艦隊三千隻では、単純計算でも百倍以上の戦力差になります」
ヴェルミナが、険しい表情で戦況を分析する。
「集合意志からの支援は?」
「アルゴス集合体も、艦隊を派遣してくれるとのことですが、到着まで、あと半日はかかるとの連絡です」
「半日……その間、俺たちだけで持ちこたえないといけない、ということですね」
レンは、拳を握りしめながら、戦術マップを見つめた。
『マスター、一つ提案がございます』
ゼロ号が、静かに声を上げる。
「なんだい、ゼロ号」
『虫族連合の艦艇は、生物的な質感を持つことから、恐らく個体としての“群れの本能”に基づいた行動をとっていると推測されます。もしそうであれば――』
「群れの本能……」
『中心となる指揮個体、いわば“女王艦”を無力化できれば、群れ全体の統率が崩れる可能性があります』
レンは、その提案に目を見開いた。
「女王艦を、特定できるのか?」
『敵艦隊の通信パターンを分析すれば、指揮系統の中心を割り出せるはずです』
「よし、やってみよう」
こうして、レンたちは、五十万隻という圧倒的な数的劣勢の中、女王艦を狙い撃つという、一点突破の作戦を立てることとなった。
「敵艦隊、接近中! 全艦、迎撃態勢!」
伝令の声と共に、宇宙空間に、これまでで最大規模の艦隊戦が幕を開けた。
視界を埋め尽くすほどの敵艦の群れ。だが、レンが強化した銀河艦隊は、一隻一隻が驚異的な性能を誇り、着実に敵艦を撃破していった。
「ゼロ号、女王艦の位置は特定できたか?」
『解析中です、マスター……! 通信パターンの集中箇所を検知、あと少しで特定できます!』
戦況は、一進一退の様相を呈していた。数の暴力に押されながらも、銀河艦隊は必死に持ちこたえ続けている。
「くっ、こちらの艦艇にも、被害が出始めています!」
「耐えろ! ゼロ号が、女王艦を特定するまでの辛抱だ!」
レンは、艦隊全体への指示を飛ばしながら、祈るような想いでゼロ号の解析を待った。
『マスター、特定完了! 女王艦の座標、送信します!』
「よし……! 全艦、座標へ集中砲火!」
レンの号令と共に、銀河艦隊が一斉に、特定された座標へと砲撃を集中させた。
轟音と共に、ひときわ巨大な艦影が、爆炎に包まれる。
「女王艦、撃破確認!」
その報告と共に――虫族連合の艦隊の動きが、明らかに乱れ始めた。
「敵艦隊、統率を失い始めています! これは……!」
「今だ! 一気に押し切れ!」
女王艦を失った虫族連合は、統一された戦術を維持できず、次第に混乱の中で崩壊していった。
半日にも及ぶ激戦の末、虫族連合の本隊は、ついに撤退を余儀なくされた。
「て、撤退します! 虫族連合、全艦、撤退を開始しました!」
管制室に、これまでにない歓声が沸き起こった。
「……勝った、のか」
レンは、疲労困憊の表情で、静かに呟いた。
だが、この勝利の裏側で、新たな脅威の存在が、静かに宇宙の彼方から、レンたちを見つめていた。
(第4話へ続く)




