第1話「迫りくる大群」
「虫族連合の艦隊、既に星系外縁部に到達……予測を、大幅に上回る速度です」
ヴェルミナの報告に、指揮所全体が緊張に包まれた。
「規模は?」
「観測班の分析によれば、およそ十五万隻。想定していた最大規模を、さらに上回っています」
レンは、拳を握りしめながら、宇宙戦術マップを見つめた。
「銀河艦隊の規模は?」
「現時点で、完成しているのは約三千隻です」
「圧倒的に、数が足りない……」
ガイウスが、険しい表情で唸った。
「レン、どうする」
「……数で対抗するのは、現実的じゃない。なら、質で対抗するしかない」
レンは、これまで積み重ねてきた強化理論を、脳裏で組み立て直していった。
「ゼロ号、艦隊全体の性能を、今から最大限まで引き上げる。付き合ってくれ」
『了解であります、マスター! 全力でサポートいたします!』
こうして、レンは、限られた時間の中で、艦隊全体への総仕上げの強化に取り掛かることとなった。
その頃、集合意志からも、緊急の通信が届いていた。
『虫族連合の侵攻を確認した。我々アルゴス集合体も、可能な限りの支援を行う』
「ありがとうございます……!」
「ですが」と集合意志は続けた。
『虫族連合の本隊は、我々の予測を超える規模で展開している。楽観視はできない状況だ』
レンは、これまでにない緊張感の中、艦隊の強化を進めていった。
「装甲強化、推進機構の最適化、そして――主砲の威力を、限界まで引き上げる」
一隻一隻、丁寧に理解を深めながらの強化作業。時間との勝負の中、レンは寝る間も惜しんで作業を続けた。
「レン、少しは休めよ」
ガイウスが、心配そうに声をかける。
「大丈夫。ここで手を抜いたら、皆を守れなくなる」
レティシアも、静かにレンの隣に立った。
「あんたは、いつも自分を後回しにするのね」
「そうかもしれない。でも――今回ばかりは、これが最善の方法なんだ」
三日間にわたる不眠不休の作業の末、艦隊全体への強化が、ついに完了した。
「これで……いける」
レンは、疲労困憊の表情ながらも、確かな手応えを感じていた。
「敵艦隊、いよいよ星系内へ侵入を開始しました!」
伝令の声に、レンは立ち上がった。
「全艦隊、迎撃態勢へ」
こうして、宇宙全体を巻き込む、これまでで最大規模の戦い――虫族連合との決戦の火蓋が、切って落とされることとなった。
(第2話へ続く)




