第10話「師の告白」
「わしはかつて――地球より遥か以前に、この惑星系へ漂着した、別の異世界からの技術者だった」
ドルシスは、静かに、遠い記憶を辿るように語り始めた。
「わしの故郷は、既に高度な工業文明を築いていた。だが、ある時、文明同士の対立から、故郷そのものが滅びる寸前まで追い込まれた」
「そんな……」
「わしは、かろうじて生き延び、この世界へと流れ着いた。以来、技術顧問として、この地に留まり続けてきた」
ドルシスは、レンをまっすぐに見据えた。
「レン、お前のスキルを最初に目にした時、わしは確信した。……お前の力は、いずれ、わしの故郷を滅ぼした対立構造そのものを、乗り越える可能性を秘めていると」
「乗り越える、というのは……」
「理解に基づく強化。それは、力による支配でも、画一的な効率化でもない、第三の道だ。わしは、その可能性に懸けて、お前に知識を授けてきた」
レンは、ドルシスの言葉に、深い感慨を覚えた。
「ドルシスさんが、ずっとそんな想いを抱えていたなんて……」
「すまんな、今まで黙っていて」
「いえ……教えてくれて、ありがとうございます」
ドルシスは、僅かに口元を緩めた。
「レン、これから先、お前が挑む試練は、ますます大きくなっていくだろう。虫族連合、そしてその先に待つ、より広大な宇宙の脅威――だが、わしは、お前ならば、必ず道を切り開けると信じている」
「はい。頑張ります」
この告白を機に、レンとドルシスの絆は、これまで以上に深いものへと変わっていった。
数ヶ月にわたる準備期間を経て、レンたちは、虫族連合の侵攻に対応するための、大規模な「銀河艦隊」を完成させていた。
「銀河艦隊、試験運用、開始します」
完成した艦隊が、宇宙空間へと展開していく。かつての飛行艦隊を遥かに凌駕する規模と性能を誇る、新たな戦力だった。
『マスター、艦隊制御システム、正常に稼働中であります!』
ゼロ号の報告に、レンは頷いた。
「これで、虫族連合の侵攻にも、対抗できる態勢が整った」
だが、その矢先――
「零崎殿、緊急事態です!」
ヴェルミナが、慌てた様子で駆け込んでくる。
「虫族連合の艦隊、予測を大幅に上回る速度で、既に星系の外縁部に到達しているとの報告です!」
「なんだと……!」
レンは、思わず声を荒げた。
「予測より、遥かに早い……!」
準備の整った矢先に迫る、想定を超える脅威。
これより、レンたちの物語は、宇宙全体を巻き込む、本格的な「宇宙戦争編」へと突入していくこととなる。
(第5巻・完 第6巻へ続く)




