第7話「異端の演算群」
「異端の演算群、との対峙……具体的には、何をすればいいんでしょうか」
レンの問いに、集合意志は静かに応じた。
『貴殿らには、異端群が占拠する演算コロニーへの単独潜入を求める。武力による制圧ではなく、対話による解決を試みてもらいたい』
「対話……ですか」
『異端群は、我々の統治理念に反発し、独自の演算体系を構築しようと試みている、いわば反乱分子だ。だが――彼らの主張にも、一定の理があるという声も、我々の中には存在する』
その言葉に、レンは少し驚いた。
「集合意志の中にも、意見の相違があるんですか」
『我々は単一の意志ではあるが、内部には多様な演算プロセスが並行して存在する。完全な均一化は、非効率を招くこともある』
レンは、ヴェルミナと顔を見合わせた。
「思ったより、単純な組織じゃないんですね」
「ええ。むしろ、我々人間社会と、根本的にはそう変わらないのかもしれません」
こうして、レンたちは、異端の演算群が占拠するというコロニーへと向かうこととなった。
コロニーに到着すると、そこには、これまで見た機械文明の秩序だった雰囲気とは対照的な、雑然とした空気が漂っていた。
「侵入者か」
鋭い声と共に、複数の機械個体が、レンたちを取り囲む。
「待ってください。俺たちは、対話をするために来ました」
レンが、慌てて両手を上げる。
「対話、だと? 集合意志の犬が、何を今更」
機械個体の一体が、警戒心を露わにする。
「俺たちは、集合意志の傘下に入ることを、断りました。その上で、あなた方の主張を、理解しに来たんです」
その言葉に、機械個体たちの間に、僅かな動揺が走った。
「……傘下に入ることを、断った、だと?」
「はい。俺たちは、誰かに決められるんじゃなく、自分たちで選び取る道を選びたいんです」
程なくして、異端群の指導的存在と思しき機械個体が、姿を現した。
『我は、異端群を統括する演算体、名を持たぬ者』
「初めまして。零崎レン、と申します」
『貴殿の主張、興味深く聞かせてもらった。我らもまた、集合意志による画一的な統治に、強い反発を抱いている』
名を持たぬ者は、静かに続けた。
『集合意志は、効率という名のもとに、個々の演算体が持つ独自性、多様性を切り捨てようとする。我らは、それを是としない』
「あなた方の主張、俺には共感できる部分があります」
レンは、正直な想いを口にした。
「理解に基づく強化が、俺の力の本質です。画一化された効率じゃなく、それぞれの個性や在り方を理解し、伸ばしていく――それが、本当の意味での“強さ”だと思うんです」
その言葉に、名を持たぬ者は、しばらく沈黙した後、静かに応じた。
『貴殿の理念、しかと受け取った。……我らの主張を、集合意志に取り次いでもらえるか』
「はい。全力で、お手伝いします」
こうして、レンたちは、異端群と集合意志の橋渡し役という、思いがけない立場を担うこととなった。
地上の五大勢力の和解を成し遂げた経験が、今、宇宙という舞台でも、新たな形で活かされようとしていた。
(第8話へ続く)




