第5話「決断」
「招待に応じるべきか、否か……」
大陸連合の緊急会議の場で、レンは重い決断を迫られていた。
「相手の真意が読めない以上、招待に応じることには、大きなリスクが伴います」
ヴェルミナが、慎重な意見を述べる。
「ですが、拒めば、それはそれで彼らを刺激することにもなりかねません」
「レン、お前はどう思う?」
ガイウスの問いに、レンはしばらく考え込んだ。
「……行くべきだと思う」
「危険は承知の上か」
「うん。でも、拒み続けていても、いずれ向こうから接触してくるはずだ。なら、こちらから積極的に理解を深めに行った方が、まだ主導権を握れる」
ドルシスが、静かに頷いた。
「良い判断だ。理解なくして、真の対話は成り立たん」
「ただし」
レンは、真剣な表情で続けた。
「万が一の事態に備えて、防衛体制はしっかりと整えておきたい。俺が留守の間、大陸の守りは頼めますか」
「もちろんだ。任せておけ」
ガイウスが、力強く頷いた。
こうして、レンは、ヴェルミナ、ゼロ号、そして少数の護衛を伴い、完成したばかりのワープ実験機で、宇宙へと旅立つこととなった。
「本当に、行っちゃうのね」
出発の日、レティシアが見送りに来ていた。
「うん。必ず、無事に帰ってくるから」
「約束よ」
レティシアは、真剣な眼差しでレンを見つめた。
「あんたがいない間、あたしがちゃんと、大陸を守っておくから」
「ありがとう、レティシア」
こうして、レンたちを乗せた宇宙船は、大気圏を突破し、宇宙空間へと躍り出た。
「これが……宇宙」
窓の外に広がる、満天の星々。地上からでは決して見ることのできない、圧倒的な光景に、レンは思わず言葉を失った。
『マスター、座標設定完了であります! アルゴス集合体の本拠地へ、ワープを開始いたします!』
「頼む、ゼロ号」
次の瞬間、視界が大きく歪み、宇宙船の姿が、瞬く間に消え去った。
――そして再び姿を現した先には、想像を絶する規模の、巨大な機械構造体が広がっていた。
「あれが……アルゴス集合体の本拠地……」
惑星規模はあろうかという、無数の機械構造が複雑に絡み合った、その圧倒的な威容に、レンは息を呑んだ。
『歓迎する、地球外知的生命体よ』
通信越しに、これまでとは異なる、より重々しい声が響いた。
『我らが集合意志との、直接対話を開始する』
こうして、レンたちの、宇宙規模の壮大な対話が、いよいよ始まろうとしていた。
(第6話へ続く)




