第3話「宇宙船の理解」
斥候個体が残していった機体データを解析するため、レンたちは新たな作業拠点――旧ドラケイン帝国の宮殿跡地に建設された、大陸連合の技術研究所へと拠点を移していた。
「このデータ量、想像を絶しますね」
ヴェルミナが、膨大な解析データを前に、思わず息を漏らした。
「地球の技術体系とも、この異世界の魔導技術とも、根本から異なる原理が使われています」
レンは、資料を読み込みながら、必死に理解を深めていった。
「重力制御……反物質エネルギー……ワープ理論……」
これまでの戦車や戦闘機とは、次元の異なる概念の数々に、レンは何度も頭を抱えた。
「レン、無理をするなよ」
ガイウスが、心配そうに声をかける。
「大丈夫。時間はかかるかもしれないけど、一つ一つ、理解していけば、必ず道は開ける」
その言葉通り、レンは寝る間を惜しんで、宇宙技術への理解を積み重ねていった。
数週間後、ようやく最初の成果が形になり始めていた。
「これが、宇宙船の試作機……」
これまでの戦闘機の技術を応用しつつ、新たに理解した宇宙工学の理論を組み込んだ、小型の実験機が完成していた。
「試験飛行を行います」
基地上層部の立ち会いのもと、レンは実験機に強化を施していく。
「まずは、大気圏突破の性能から」
実験機が、轟音と共に発進し、瞬く間に大気圏を突破していく。
「大気圏突破、成功であります!」
ゼロ号の報告に、研究所全体から歓声が沸き起こった。
「よし……次は、速度の限界に挑戦しよう」
レンは、推進機構への理解をさらに深めていった。反物質エネルギーの理論、重力制御による慣性緩和――理解が深まるごとに、実験機の性能は、想像を絶する領域へと突入していく。
「速度計測……光速の、10パーセントを突破!」
「な、なんだと……!」
研究者たちの間に、驚愕の声が広がる。
「まだ、いける」
レンは、さらに理解を重ねていった。
数ヶ月にわたる地道な研究の末――ついに、その日が訪れた。
「速度計測……光速、突破確認!」
管制室に、割れんばかりの歓声が響き渡った。
「や、やった……! 光速を超えたぞ……!」
「零崎殿、これは……人類史上、いえ、この惑星の歴史上、初めての快挙です!」
レンは、モニターに映る実験機の航跡を見つめながら、深く息を吐いた。
「まだ、始まりに過ぎません。ここからさらに――ワープ技術の実現を目指します」
『マスター、素晴らしい成果であります!』
ゼロ号の弾んだ声に、レンは僅かに笑みを浮かべた。
だが、この輝かしい成果の裏側で、レンの脳裏には、常にある予感が付きまとっていた。
(機械文明の“判断”は、まだ下されていない。彼らが、俺たちの技術を見て、どう動くか……)
果たして、機械文明は、レンたちを敵と見なすのか、それとも――。
宇宙という、これまでとは比較にならない広大な舞台で、レンたちの新たな戦いが、幕を開けようとしていた。
(第4話へ続く)




