第2話「機械文明の使者」
『地球外知的生命体との、接触を確認』
その機械的な存在は、レンたちを見渡しながら、淡々と言葉を続けた。
『我々は、機械文明――アルゴス集合体の斥候個体である。この星系における、知的生命体の存在及び技術水準を調査するため、派遣された』
「機械文明……アルゴス、集合体?」
レンが困惑気味に問い返すと、斥候個体は静かに頷いた。
『我々の文明は、生物的な個体ではなく、集合的な機械知性によって構成されている。此度の調査は、貴星系への進出可否を判断するためのものである』
「進出、というと……」
「もし我々の技術水準が、彼らの基準に満たないと判断されれば――侵略の対象になる、ということでしょうか」
ヴェルミナが、冷静に分析を加える。
『その可能性は、否定できない』
斥候個体は、あっさりとそれを認めた。
「そんな……!」
レンは、思わず声を上げた。
『貴殿らの技術水準を、直接確認させてもらいたい』
斥候個体の視線が、レンへと向けられる。
『先ほど、貴殿は、我々の機体構造の一部を、独自の理論で解析していた。その技術体系について、詳しく説明を求める』
「え、俺の……アイテム強化のことですか」
『理解に基づき、対象の性能を上限なく引き上げる、という理論だな。データとして、既に一部を観測している』
レンは、緊張しながらも、これまでの経緯を簡潔に説明した。
『……興味深い』
斥候個体は、しばらく沈黙した後、静かに告げた。
『貴殿らの技術水準は、我々の想定を上回る、特異な性質を持っているようだ。単純な工業力とは異なる、理解に基づく無制限の性能拡張――これは、我々のデータベースにも類例がない』
「それで、どうなるんですか。侵略の対象になるんですか、それとも……」
『判断を保留する。より詳細な調査が必要だ』
斥候個体は、そう告げると、静かに構造物の中へと戻っていった。
「保留……ということは、まだ猶予はある、ということでしょうか」
ヴェルミナの問いに、ドルシスが険しい表情で答えた。
「猶予があるうちに、備えを進めるべきだろうな。奴らが本気で侵略を決断すれば、地上の戦争とは比較にならない規模の脅威になる」
レンは、拳を握りしめた。
「宇宙船……いや、それ以上の技術が、必要になるということですね」
『マスター、ご提案があります』
ゼロ号が、静かに声を上げた。
『先ほどの斥候個体の機体構造、可能な限りデータを収集いたしました。これを解析すれば、宇宙技術への理解を、大きく前進させられる可能性があります』
「ありがとう、ゼロ号。早速、取り掛かろう」
こうして、レンたちは、宇宙という未知の領域への挑戦を、本格的に開始することとなった。
地上の統一を成し遂げたばかりのレンに、さらに壮大な、宇宙規模の試練が待ち受けていた。
(第3話へ続く)




