第1話「月の向こうから」
大陸統一の余韻も冷めやらぬ中、レンは統括者としての執務に追われる日々を送っていた。
「零崎殿、例の未確認飛来物について、続報が入りました」
ヴェルミナが、緊迫した表情で報告書を手にレンの執務室を訪れた。
「どうなりましたか」
「大陸各地の観測拠点で、同様の光が複数確認されています。専門家の分析によれば、これは自然現象ではなく――明らかに、人工的な構造物である可能性が高いとのことです」
「人工的な……つまり」
「はい。地球や、この異世界とは異なる、第三の文明が関与している可能性があります」
レンは、執務室の窓から夜空を見上げた。月が、いつもと変わらぬ姿で浮かんでいる。だが、その向こう側に、まだ見ぬ何かが存在しているのだと思うと、得も言われぬ緊張感が胸に広がった。
数日後、その予感は現実のものとなった。
「零崎殿、大変です!」
ゼロ号が、慌ただしく執務室に飛び込んでくる。
『月の裏側より、巨大な物体が、地上へ向けて降下を開始しました!』
「なんだって……!」
レンは、急いで観測室へと向かった。巨大なスクリーンに映し出されていたのは、大気圏を貫いて降下してくる、明らかに人工的な、巨大な構造物だった。
「あれは……船?」
「宇宙船、と呼ぶべきものかもしれません」
ドルシスが、珍しく緊張した面持ちで、スクリーンを見つめていた。
「レン、覚悟しておけ。これは――地上の争いとは、次元の異なる脅威になるやもしれん」
巨大な構造物は、大陸の北方地域に、轟音と共に着地した。
「着地地点周辺の住民は、既に避難させております」
ヴェルミナの報告に、レンは頷いた。
「俺たちも、現地へ向かいましょう」
「危険が伴います。慎重な対応が必要かと」
「分かってます。でも、放っておくわけにはいかない」
こうして、レンたちは、着地した謎の構造物の元へと向かうこととなった。
現地に到着すると、巨大な金属製の物体が、大地に深々とめり込むように鎮座していた。表面には、これまで見たこともない紋様や、機械的な構造が刻まれている。
「これは……」
レンは、その構造物に、静かに手を触れた。
(理解、しなければ)
これまで培ってきた「理解する力」を頼りに、レンはその構造の一部を、少しずつ読み解いていった。
『マスター、内部からエネルギー反応を検知しました! 何かが、起動しようとしています!』
ゼロ号の警告と共に、構造物の一部が、静かに開き始めた。
「下がってください!」
レンは、周囲の兵士たちに退避を促した。
開かれた扉の奥から現れたのは――金属質な質感を持つ、人型に近い姿をした存在だった。
「……これは、機械?」
その存在は、静かにレンたちを見渡した後、ゆっくりと口を開いた。
『地球外知的生命体との、接触を確認』
機械的でありながら、どこか感情の宿ったその声に、レンは息を呑んだ。
この瞬間から、レンたちの物語は、大陸という枠を超え、宇宙という壮大な舞台へと、その幕を開けることとなる。
(第2話へ続く)




