第5話「レティシアの決意」
ノルデア王国からの会談後、基地へと戻ったレンは、重い決断を前に、思い悩む日々を過ごしていた。
「大陸統一、か……」
夜、宿舎の一室で、レンは一人、天井を見上げながら呟いた。
「そんな大それたこと、俺なんかが、本当にやっていいんだろうか」
『マスター、思い悩んでいらっしゃいますね』
ゼロ号が、静かに声をかけてくる。
「うん……正直、まだ整理がついてないんだ」
『ゼロは、マスターの決断を、いつでも支持する所存であります。ですが、一つだけ申し上げるとすれば――』
「なんだい?」
『マスターがこれまで守ってきたのは、常に“目の前の誰か”でありました。もし大陸統一が、その延長線上にあるものだと感じられるのであれば、決して大それたことではないと思います』
その言葉に、レンは少し救われる思いがした。
翌日、レンはレティシアと共に、基地の高台に登っていた。
「レティシア、聞いてほしいことがあるんだ」
「ノルデア王国の件でしょ。ヴェルミナから聞いたわ」
レティシアは、静かにレンの隣に腰を下ろした。
「あんた、どうしたいの?」
「分からない……大陸統一なんて、途方もない話だ。俺一人の力で、そんなことが成し遂げられるとは思えない」
「あんた一人の力じゃないでしょ」
レティシアは、まっすぐにレンを見据えた。
「あたしがいる。ガイウスも、ヴェルミナも、ドルシスさんも、ゼロ号も。あんたが望むなら、みんなで支える。それじゃ、駄目なの?」
その言葉に、レンは目を見開いた。
「レティシア……」
「思い出してよ。あんたが最初にナイフを強化した時、誰も見てなかった。でも今は違う。あんたの周りには、ちゃんと信じてくれる人がいる」
レティシアは、少し照れくさそうに視線を逸らした。
「あたしも、ずっと考えてたの。この戦争を通して、たくさんの人が傷ついたり、亡くなったりするのを見てきた。もし本当に、大陸から争いを無くせるなら……それは、やる価値のあることなんじゃないかって」
「レティシア、それって……」
「あたしは、あんたの選択を支持する。どんな選択でもね。だから――怖がらずに、あんたが本当にやりたいことを、選んでいいのよ」
レンは、しばらく黙って夜空を見上げた後、静かに口を開いた。
「……ありがとう、レティシア。少し、覚悟が決まった気がする」
翌日、レンは基地の司令官、そしてヴェルミナ、ガイウス、ドルシスを集め、自らの決意を語った。
「俺は、ノルデア国王の提案を、受けようと思います」
「大陸統一、ということですね」
ヴェルミナの確認に、レンは頷いた。
「ただし、条件があります。俺は、力で誰かを支配するつもりはありません。あくまで、争いを終わらせ、皆が安心して暮らせる大陸を作るための統一を目指します」
「良い覚悟だ」
ドルシスが、静かに頷いた。
「レン、お前らしい選択だと思うぞ」
ガイウスも、力強く笑ってみせた。
こうして、レンの物語は、「大陸統一」という、新たな、そして最大の挑戦へと向かっていくこととなる。
まだこの時、誰も知らなかった。この決断が、やがて宇宙にまで広がる、壮大な物語の始まりになることを。
(第6話へ続く)




