第4話「王国の使者」
反乱軍の鎮圧から数週間、大陸には束の間の平穏が訪れていた。
「零崎殿、王国から正式な使者が到着しております」
ヴェルミナの報告に、レンは首を傾げた。
「王国、というと……」
「大陸北方に位置する、ノルデア王国です。ドラケイン帝国とは長らく対立関係にありましたが、此度の戦後処理を巡り、正式な会談を求めてきています」
程なくして、レンたちの元に、王国の使者が到着した。
「初めまして、零崎レン殿。私は、ノルデア王国より遣わされた外交官、と申します」
物腰の柔らかい壮年の男性が、丁寧に一礼する。
「陛下より、貴殿への伝言を預かっております」
「陛下……ノルデア国王からの?」
「はい。此度のドラケイン帝国との戦、そして反乱軍の鎮圧――貴殿の功績は、既に我が国にも広く伝わっております」
使者は、真剣な眼差しでレンを見つめた。
「陛下は、貴殿との直接の会談を望んでおられます。この機に、両国の関係を、より強固なものにしたいとのお考えです」
「会談……ですか」
「加えて、もう一つ。陛下は、この機会に大陸全土の安定を図る、新たな枠組みの構築を提案したいとのお考えもお持ちです」
「新たな、枠組み……?」
使者は、慎重な口調で続けた。
「大陸には、いまだ多くの小国が乱立し、常に紛争の火種を抱えております。貴殿ほどの力を持つ御方が、その調整役を担っていただければ――」
「待ってください」
レンは、思わず声を上げた。
「俺は、政治的なことには、詳しくありません。それに、そんな大それた役割を担うなんて……」
「零崎殿」
ヴェルミナが、静かに口を挟んだ。
「まずは、会談だけでも受けてみてはいかがでしょうか。話を聞くだけなら、何かを約束することにはなりません」
「……分かりました。会談だけなら」
こうして、レンはノルデア王国との会談に赴くこととなった。
王都に到着したレンを迎えたのは、威厳に満ちた佇まいの国王だった。
「よくぞ参られた、零崎レン殿」
「お招きいただき、ありがとうございます」
国王は、レンをまっすぐに見据えた。
「単刀直入に申そう。この大陸は、あまりに長く、争いの絶えない時代を過ごしてきた。貴殿の力があれば――その争いに、終止符を打てるのではないかと、私は考えている」
「終止符、ですか」
「大陸を一つにまとめ、真の平和をもたらす。壮大な理想かもしれぬ。だが、貴殿の力があれば、決して不可能ではないはずだ」
その言葉に、レンは強い戸惑いを覚えた。
(大陸を一つに……そんな、途方もないこと)
だが同時に、これまで見てきた戦争の惨禍、傷ついた人々の姿が、レンの脳裏をよぎった。
「……少し、考えさせてください」
「無論だ。急いては事を仕損じる。じっくりと、答えを出してくれればいい」
こうして、レンは思いがけない形で、「大陸統一」という、途方もない未来への選択を、突きつけられることとなった。
(第5話へ続く)




