第3話「精密なる力」
「マスター、演算のサポートを開始します」
ゼロ号の声に、レンは頷いた。
「ドローン部隊の武装を、殺傷力ではなく“無力化”に特化した形に強化する。狙うのは、あくまで反乱兵の武器や装備だけだ」
「そんな器用な真似、できるのか?」
ガイウスが、心配そうに問いかける。
「やってみないと分からない。だけど……村人たちを傷つけずに救い出す方法は、これしか思いつかない」
レンは、ドローンの攻撃システムに、これまでとは全く異なる方向性の強化を施し始めた。対象を破壊するのではなく、武器そのものだけを狙って無力化する――精密な制御を要求される、繊細な強化だった。
「精度、精度……もっと、細かく」
額から汗が滴り落ちる。単純な威力強化よりも、遥かに神経を使う作業だった。
数十分の格闘の末、レンはようやく満足のいく強化を完成させた。
「よし……いける」
『マスター、いつでも出撃可能であります!』
「頼む、ゼロ号。村人たちを、絶対に傷つけないように」
『お任せください!』
ゼロ号を中心としたドローン部隊が、静かに村へと進入していく。
反乱兵たちが、人質を盾にしながら威嚇の声を上げる。
「近づくな! これ以上近づけば、人質がどうなるか……」
その言葉が終わる前に、ドローン部隊が一斉に精密射撃を放った。
――狙いは、反乱兵たちが構えていた武器のみ。
剣が、槍が、次々と根元から粉砕され、地面へと転がっていく。人質を取っていた兵士たちの手からも、武器が弾け飛んだ。
「な、なんだと……!?」
武器を失った反乱兵たちが、混乱に陥る隙を突き、ガイウスとレティシア率いる部隊が、一気に突入した。
「今だ! 村人を保護しろ!」
村人たちが、次々と救出されていく。
「や、やられた……!」
武装を失った反乱兵たちは、あっという間に投降を余儀なくされた。
「……終わった、のか」
レンは、安堵の息を吐きながら、救出された村人たちの姿を見つめた。
「零崎殿、見事な采配でした」
ヴェルミナが、珍しく素直な賞賛の言葉をかけてきた。
「破壊の力だけでなく、こうした精密な制御まで可能にするとは。貴殿の強化理論は、まだまだ底が見えませんね」
「たまたま、上手くいっただけです」
レンは、控えめに答えながらも、内心では新たな手応えを感じていた。
(強化は、破壊のためだけの力じゃない。守るための、精密な力にもなる)
この一件を通じて、レンの強化理論は、また一つ新たな段階へと進化を遂げていくこととなった。
村人たちの感謝の声を受けながら、レンはふと、ドルシスの言葉を思い出していた。
「――もしその力が、いずれ物理法則そのものにまで届いたとしたら」
(あの時ドルシスさんが言いかけた言葉……いったい、何を意味してたんだろう)
まだ見ぬ未来への予感を胸に、レンたちは次なる課題へと向かっていくこととなる。
(第4話へ続く)




