第7話「王都防衛」
「ザガレス皇帝の別動隊、王都グレアムへ向け進軍中とのことです」
ヴェルミナが、緊迫した表情で報告を続ける。
「規模はおよそ一万五千。本隊ほどの数ではありませんが、精鋭部隊のみで構成されているとの情報です」
「王都には、どれほどの防衛戦力が?」
「正規兵、およそ二千。到底、太刀打ちできる規模ではありません」
レンは、地図上の王都と、迫りくる敵軍の位置関係を見つめた。
「間に合うか、俺たちの部隊で」
「急げば、間に合わないこともないでしょう。ですが」
ヴェルミナは、一瞬言葉を切った。
「東部戦線から王都まで、飛行艦隊であれば数時間で到達可能ですが、戦車隊は地上移動となるため、到着が遅れます」
「なら、飛行艦隊を先行させて、時間を稼ぐ」
レンは、即座に決断を下した。
「ゼロ号、飛行艦隊、王都へ急行してくれ」
『了解であります、マスター! 最速ルートを算出いたします!』
ガイウスとレティシアも、精鋭の歩兵部隊を率いて王都へと急行することとなった。
「レン、お前はどうする?」
「俺も、飛行艦隊と共に向かう。現地で、リアルタイムの強化サポートが必要になるかもしれないから」
「無理すんなよ」
「うん……ありがとう」
こうして、レンを乗せた飛行艦隊が、王都グレアムへと急行した。
到着した時には、既に王都の外壁が、敵軍の攻城兵器によって激しく揺さぶられていた。
「間に合った……!」
レンは安堵の息を吐きながら、飛行艦隊への指示を飛ばした。
「上空から、攻城部隊を叩いてください!」
空を舞う飛行艦隊が、王都を包囲する敵軍の攻城兵器を、次々と精密に破壊していく。
「な、なんだ、あの部隊は……!」
突然の空爆に、敵軍の攻勢が一時的に鈍った。
「今のうちに、防衛線を立て直します!」
王都の正規兵たちも、レンの部隊の支援を受けながら、態勢を整え始めた。
だが、敵軍の中でも、ひときわ異彩を放つ一団が、着実に城壁へと迫っていた。
「あれは……ザガレス皇帝直属の親衛隊か……!」
現地の指揮官が、緊張した声を漏らす。
城壁の一角が、親衛隊の猛攻についに突破されかけた、その時――
「間に合ったぜ!」
地上から到着したガイウスとレティシア率いる部隊が、突破口へと駆けつけた。
「ガイウス、レティシア!」
「レン、後は任せろ! ここは俺たちが食い止める!」
ガイウスの大剣が、親衛隊の一角を大きく薙ぎ払う。レティシアもまた、剣聖の加護を纏った剣技で、次々と敵兵を斬り伏せていく。
地上と空、両面からの猛攻を受けた敵軍は、次第に統率を失い始めた。
「て、撤退だ! これ以上は……!」
半日にわたる激戦の末、ザガレス皇帝の別動隊は、ついに撤退を余儀なくされた。
「……守り、切ったのか」
レンは、王都の城壁から、退いていく敵軍を見つめながら、深く息を吐いた。
「零崎殿!」
王都の国王が、涙を浮かべながら駆け寄ってくる。
「貴殿のおかげで、この王都は救われました。まさに、我らが救世主だ」
「い、いえ、俺は……」
レンが言葉を濁す中、周囲からは割れんばかりの歓声が湧き起こっていた。
「零崎レン万歳!」
「大陸の救世主、万歳!」
その歓声の渦の中で、レンはただ一人、複雑な想いを抱えながら立ち尽くしていた。
(俺は、本当に……何をしてるんだろう)
英雄視されればされるほど、深まっていく孤独。
だが、この戦いの終わりは、まだ見えていなかった。
(第8話へ続く)




