第7話「小国への道」
遠征部隊は、戦車三両、戦闘機二機、そしてゼロ号を中心とした攻撃ドローン部隊で編成された。
操縦にあたるのは、基地の正規兵たち。レンの役目は、あくまで後方から強化と整備を担うことに徹する。
「レン、本当にお前は最前線には出ないんだな」
ガイウスが呆れ半分に確認してくる。
「うん。俺が戦えるわけじゃないから。ガイウスは?」
「俺は歩兵として同行するさ。この機会に、自分の実力もちゃんと示してやる」
レティシアもまた、剣士として同行を志願していた。
「あたしも行くわ。あんたたちだけに任せて、指を咥えて見てるわけにはいかないもの」
こうして、レンを中心とした一団は、グレアム小国へと向けて出発した。
道中、レンは移送用のトラックの荷台で、資料を読み込みながら過ごしていた。ドラケイン帝国軍の装備や戦術について、事前に集められる限りの情報を頭に入れておくためだ。
『マスター、敵軍の装備データ、分析が完了いたしました』
ゼロ号が、通信越しに報告を上げる。
「ありがとう、ゼロ号。何か気になる点は?」
『はい。ドラケイン帝国軍は、魔法兵科を主力としており、物理的な防御力はさほど高くない模様です。一方で、数の暴力によって圧倒する戦術を得意としているようであります』
「数か……」
レンは、これまで強化してきた戦力を思い浮かべた。単体の性能では、圧倒的な差をつけられる自信がある。だが、相手が数を頼みにするなら、こちらも「数」への対処が必要になるかもしれない。
(戦車隊、飛行部隊……単に一つ一つを強くするだけじゃなく、連携させる仕組みも、考えておいた方が良さそうだ)
三日間の行軍を経て、遠征部隊はついにグレアム小国の国境付近に到着した。
既に前線からは、砲撃の音と土煙が立ち上っているのが確認できた。
「状況は?」
部隊を率いる指揮官が、斥候からの報告を受ける。
「グレアム軍は既に後退を余儀なくされています。国境の要塞も、間もなく陥落する危険性があります」
「……間に合ったか、ぎりぎりで」
レンは、遠くに見える戦場を見つめながら、拳を握りしめた。
「戦車隊、前進準備を」
指揮官の号令と共に、レンが強化した戦車三両が、静かに動き出す。
「レン、お前の出番だぞ」
ガイウスの言葉に、レンは頷いた。
「はい。ここからは、皆さんの戦いを、俺が全力で支えます」
戦場の喧騒が、次第に近づいてくる。
誰も予想していなかった。ここから始まる戦いが、後にレンを「最強勇者」と誤解させ、彼自身の孤独をより一層深めていくきっかけになることを。
だが今のレンには、ただ一つの想いしかなかった。
(守れるものを、守りたい)
その決意を胸に、レンたちの部隊は、戦場へと足を踏み入れていった。
(第8話へ続く)




