第九話 親の涙
テント生活四日目。
俺たちは、学校だけはちゃんと通っていた。
俺は自慢じゃないが、中学三年間、一度も休んだことがなかったんだ。
給食の時間になった。
メニューを見ると、俺の好物ばかりだった。
何が出ていたかは覚えていない。
なぜなら、この数分後、その日のメニューなど頭から吹き飛ぶ出来事が起きるからだ。
「いただきます!」
給食を食べ始めた瞬間、校内放送が流れた。
『最近、給水塔のある山で、二人組の中学生と思われる学生服姿の男の子が、テントで生活していると、山の持ち主から連絡がありました』
「ぶっ!」
俺と武司は、口に入れていた物を盛大に吹き出した。
「おい、虎……これって……」
「しっ! 武司、黙って聞いてろ」
「平静を装え」
放送は続く。
『給水塔は非常に重要な役割をしています』
『昨夜の雨で潰れたテントを、給水塔で干しているという話です』
間違いない。
俺たちのことだった。
昨夜の雨で潰れたテントを、俺たちは給水塔に干してきたのだ。
『心当たりのある生徒は、放課後、職員室へ来なさい』
その後の給食は、まったく喉を通らなかった。
好きな物が出ていた。
覚えているのは、それだけだ。
俺と武司は無言で顔を見合わせた。
今回は逃げ切れない。
素直に自首するしかなかった。
放課後。
俺たちは二人で職員室へ向かった。
そこで待ち構えていたのは、ゴリよし、達人、美術の先生、学年主任。
まさかのオールスターだった。
さらに後から担任まで現れた。
さすがに震えた。
今まで好き放題殴られてきたメンバー勢揃いである。
まずはゴリよしの雷が落ちる。
話を聞くと、地主さんは俺たちが中学生だと知り、穏便に済ませてくれることになったらしい。
警察にも届けていない。
焚き火の跡を片付け、テントを撤去し、落書きを消せば無かったことにしてくれるという。
だが、当然ながら親は呼ばれた。
給水塔は町の水を供給する大切な設備だ。
もし俺たちの靴についた菌や汚れが入り込んでいたら、とんでもないことになっていた。
先生たちが一番怒ったのは、その部分だった。
後日、落書きを消しに行った時は地獄だった。
親たちは泣きながら先生たちに謝る。
そして俺たちは、親の目の前で、給水塔に描いた卑猥な言葉やマークを必死に消した。
最後に地主さんへ謝罪した。
すると地主さんは笑いながら言った。
「君たち、中学生なのにとんでもない体力だな」
俺たちはその後、学校へ戻った。
そして、またゴリよしに酷い目にあわされた。
なんだかんだで楽しかった思い出ではある。
だけど、この時ばかりは、
親を泣かせてしまったな。
そんな気持ちの方が強く残っている。




