第十話 逮捕された男
俺には、ちょいワルの仲間以外にも友人がいた。
少年サッカー時代からの付き合いになる、武田雄助だ。
雄助は、とにかくモテた。
もっとも、俺たちの学年には雄助と同格の人気者が二人いた。
月彦と邦夫だ。
三人が並んで写った写真は、女子の間でプレミア扱いされるほどだったらしい。
この三人は同じ小学校の出身で、月彦と邦夫はマラソン大会でワンツーフィニッシュを決めたこともあるそうだ。
一方の雄助は、意外にも運動神経は普通だった。
少年サッカーでは、俺と補欠争いをしていたくらいである。
そんな雄助とは、不思議と気が合った。
中学時代、俺たちはよく二人でウォーキングをしていた。
雄助は中学の途中で引っ越してしまうが、それまではしょっちゅう一緒に歩いていた。
ある日のことだった。
俺たちは道端でライターを拾った。
そのまま適当な場所に座り込み、他愛もない話をしていた。
すると雄助が、拾ったライターをいじりながら、近くにあった段ボールに火をつけ始めた。
何か目的があったわけではない。
ただ手持ち無沙汰で、つい火をつけてしまった。
そんな感じだったと思う。
だが、気づいた時には段ボールが勢いよく燃え上がっていた。
「やべぇ!」
俺たちは慌てて段ボールを踏みつけ、必死に火を消した。
何とか鎮火した、その時だった。
一台の車が目の前で止まった。
車から男性が降りてくる。
そして怒鳴った。
「お前ら! 何してる!」
まぁ、そりゃ怒られるだろう。
完全に俺たちが悪い。
ふと男性の顔を見る。
「あっ……」
同級生の父親だった。
俺たちは散々説教をくらった。
そして最後に、その男性は胸を張って言った。
「文句があるなら、いつでも来い!」
「俺は自治会の粟野ってもんだ!」
文句なんかあるわけがない。
百パーセント俺たちが悪いんだから。
ただ、妙に自分を大きく見せる言い方が、なんとなく癇に障った。
そういえば息子も、こんな感じだった気がする。
真面目にウォーキングしていても、たった一度の悪さで見つかる。
俺たちは、その日しっかり教訓を学んだ。
実は俺、中学生の頃から新聞を読むのが好きだった。
特に事件欄が好きだった。
段ボール事件から一週間ほど経ったある日。
いつものように新聞を読んでいると、見覚えのある名前が目に飛び込んできた。
思わず二度見した。
そこに載っていたのは――自治会の粟野。
しかも、下着泥棒で逮捕だった。
なんだか色々と情けなくなった。
偉そうに説教していた大人が、下着泥棒で捕まったこと。
そんな人間に説教されていたこと。
教訓ってやつは、一度に二つも三つもやって来るらしい。
大人になった今でも、その場所を通ると思い出す。
燃え上がる段ボールを必死に踏みつけていた俺たちのことを。
そして、その横で慌てふためいていた雄助のことを。




