第二十話 蕎麦屋
高校一年生も、あと少しで終わる頃。
俺は、技能専を辞めた。
いや、正確には退学になった。
この技能専というのは、新しい職に就く人たちが、技能や資格を身につけるための学校だった。
年齢もバラバラで、みんな真面目に授業を受けている。
だが俺は、授業中ほとんど寝ていた。
こないだまで中学生だった俺に、一日二時間の睡眠での生活が続くわけがなかったんだ。
卒業すれば国家資格がもらえる。
しかも、その資格は途中で受験することもできた。
合格した瞬間に自主退学し、新しい仕事に就く人も珍しくなかった。
だが、俺の授業態度では卒業させられない。
それが学校側の判断だった。
本当は辞めたくなかった。
十六歳で国家資格を持てれば、将来きっと役に立つ。
そう思っていたからだ。
だが、体がついていかなかった。
退学になった時は、部活や先輩たちを恨んだ。
しかし、辞めたからには働かなければならない。
とりあえず、飲食店などでアルバイトを始めた。
そして、ついに原付を手に入れた。
俺は、「翼」を手に入れたんだ。
龍二と同じ轍は踏まない。
遊びすぎないよう、自分に言い聞かせていた。
ある日、原付で走っていると、中学時代の女友達が自転車を漕いでいるのを見かけた。
俺は少し先の橋の下でバイクを停め、一人でタバコをふかしていた。
すると、橋の上を通った女友達の声が聞こえてきた。
「さっきのバイク、将虎くんじゃなかった?」
「怖かったよね。暴走族なのかな?」
怖い?
俺が?
そう思い、川に映った自分を見た。
……オシャレじゃん。
やっぱり俺はアホだった。
そんな格好をしていれば、絡まれることもある。
二人組のヤンキー。
年齢もわからない。
だが、喧嘩では余裕で勝てた。
気がつけば、身長百八十一センチの大柄なヤンキー。
俺は、少しずつ自分を見失っていった。
久しぶりに武司に連絡を取り、また一緒に遊ぶようになった。
そして俺たちは、住み込みで蕎麦屋で働くことになった。
店主は、見た目で人を判断しない人だった。
「仕事さえしてくれればいい」
そんな人だった。
蕎麦屋での仕事は楽しかった。
配達も、蕎麦作りの手伝いも、何もかもが新鮮だった。
武司は正社員。
だが俺には高校がある。
昼間だけ働かせてもらっていた。
やがて、昭敏も蕎麦屋で働き始めた。
昭敏は、ヤンキータイプではなかった。
別の高校に通う、ごく普通の高校生だった。
だが、学校では毎日のようにヤンキーグループにいじめられていた。
そして、ある日。
ついにキレた。
トイレで、そのグループのリーダー格をボコボコにしてしまったんだ。
だが、その相手には年上のヤンキーの兄貴分がいた。
後日、昭敏は袋叩きに遭い、退学になってしまった。
「俺に構うな」
そんな名言を残した昭敏と、俺たちは再びつるむようになった。
こうして俺たち三人は、蕎麦屋で汗を流しながら働くことになった。




