第十六話 卒業
卒業目前、学年集会が開かれた。
俺たちの学年は、ここ数十年で先生たちの記憶にないほどヤンキーが少ない学年だったらしい。
その反面、就職する生徒がやたら多かった。
就職組は、一人ずつ壇上に立ち、社会に出る抱負を作文にして発表することになっていた。
だが、この日、俺には別の用事があった。
学校には来ていたものの、集会には遅れて参加した。
集会場に入ると、ちょうど武司が発表しているところだった。
「俺は社会に出て修行して、日本一のラーメン屋になる!」
武司らしい言葉だった。
普段は勉強など見向きもしなかった男だが、その時だけは学年全員が聞き入っていた。
俺も思わず聞き入ってしまった。
武司が前を向いているのに、いつまでも喧嘩ばかりしているのも馬鹿らしく思えた。
だから俺は、ひとまず喧嘩をやめることにした。
そして卒業式の日。
俺は前日、後輩の女の子に第二ボタンをあげていた。
正直、第二ボタンにどんな意味があるのかよく知らない。
だが翌日には、しっかり別のボタンを付けて登校した。
俺は体育祭で応援団長をやっていた。
そのせいで、一時的に人気があっただけだ。
卒業したら連絡なんて来ない。
そんなことは、最初からわかっていた。
わかっていたさ……。
だが卒業式が終わる頃には、学生服のボタンは全て消えていた。
面白がったのか、袖のボタンまで持っていく子もいた。
団長保険は、その日限りで失効したがな。
中学卒業は人生の分岐点だ。
もう二度と会わない奴もいる。
実際には、その後も付き合いが続いた連中もいたが、それぞれ違う人生を歩み始めた。
四人組の中心だった月彦は、普通科高校へ進学した。
そして後に経営者となる。
武司は、本当にラーメン屋へ就職した。
だが二か月ほどで辞めてしまった。
その後も何度か喧嘩になったが、付き合いは細く長く続いていく。
永士は工業高校へ進学した。
高校時代も、その後も変わらず付き合いは続いた。
こうして、俺たちは中学校を卒業した。
色々悪さもした。
色々な奴とも出会った。
今思えば、本当に楽しかった気がする。
そして――
高校時代の幕が開く。




