強襲
私立曙光学園は、異能界の名家が集う名門高校。
投資対効果しか頭にないケチな父さんが、俺なんかに裏口入学の手配をしてくれるはずもない。なので、俺は実力で一般入試を突破し入学した。
いよいよ二年生になるが、ようやく俺に対するいじめも鳴りを潜めていた。
そりゃあそうか。
俺をいじめた主犯の家が突如没落し、借金まみれになったんだからな。誰でも不気味がるだろう。
「あれって……天離家の落ちこぼれの……」
「シッ、あいつは疫病神だ。聞かれたら呪詛を受けるぞ」
そんな声が聞こえてくるが、もはやどうでも良くなってきた。
もちろん、これは亜里沙姉さんの仕業だ。
亜里沙姉さんは俺なんかにも優しいし、周りにも人格者で通している。だが、姉さんに【敵認定】されたら、その人物は一巻の終わりだ。いや、人物とは限らない。一族、組織、会社、機関……姉さんの気分を害した存在は、尽く潰される運命にある。
「姉さんもそろそろ動き出すんだろうなぁ」
亜里沙姉さんがローゼンハイム家を利用し尽くし、最終的に瓦解させるのは必至。姉さんの恐ろしさは俺だけが知っている。父さんでさえ気付いていないのだから、大したものだ。
姉さんの策謀に巻き込まれないことを祈ろう。
と思ったのも束の間、突如として後方から爆音が響いてきた。図書館棟の方からだ。
同時に、黒ずくめの武装集団が校門からなだれ込んできた。
「白昼堂々学校でテロとは。異能界の人間の仕業にしては雑だな」
皆の悲鳴を聞きつつ俺が独りつぶやくと、拡声器を持った男が進み出てきた。
「天離俊司を出せ! さもなくば二度目、三度目の爆発を起こす!」
面倒だな。俺への逆恨み案件か? だとしたら心当たりが多すぎるが。
「俺が天離俊司だ! 逃げも隠れもしない。だからこれ以上爆発を起こすな」
別に捕まっても脱出のアテはあるので、俺はおとなしく名乗り出た。男たちは警戒しつつ、俺との距離を詰め始める。
「させない!」
次の瞬間、白刃が閃き、鮮血が迸った。
「榊さん!?」
榊映美。【剣姫】の異名を取る異能界最強の剣士だ。
「ご主人様、ここは私にお任せを」
そして、天離家に使える俺専属の侍従でもある。
「いいや、ここは久々に共闘と行こうか、映美」
周囲はパニックに陥っているので、俺はいつものように映美の名前を呼び直した。
映美は弾丸を次々と避けつつ敵を斬り伏せていく。まさに神がかった早業だ。
そして俺が手を振るうと、テロリストどもの持つ銃火器は、突然暴発した。
「【窒素錬金】だ! 皆、発砲はするな!」
リーダーらしき人物がそう警告した。なるほど。こいつが指揮官か。分かりやすくて助かる。
そして、大気中の窒素を同質量の鉄に変える俺の能力についても、知っているようだ。この能力を以てすれば、銃火器内部の窒素を鉄に変え、詰まらせることなど容易い。
「映美。あいつだけは殺すな。後で尋問する」
「了解」
銃を使えなくなった襲撃者たちは、素手やナイフで応戦するが、長剣を持った映美の敵ではない。あっさり部下たちを倒され、指揮官の男は映美に引き倒された。そして、喉元に剣を向けられ、おとなしく手を上げている。
「くそっ、天離俊司は学校で孤立しているはずじゃ……」
「うるさい。俺がぼっちなことをわざわざ指摘するな」
俺はムカつきながらも、尋問を開始した。
「雇い主は誰だ? おおかた、ローゼンハイムかアイセンベルクだろうが、一応訊いておく」
「そんなこと、言えるはずがないだろう……!」
「じゃあ死ぬか?」
「その方がマシかもな」
男がそう吐き捨てた瞬間、男の頭部は破裂した。自白防止のための魔術でも仕込んでいたか。




