恭子と玲子 vol.082 「なみだ…、出てきちゃった。」
顔を真っ赤にして瞳に涙を浮かべている恭子。
夏輝に向けた顔、そして右目尻から頬に伝って流れる涙。
「恭…子…ちゃん…。」
小鼻まで赤くして恭子。けれども顔はにっこりと…。
「へへ…、ごめんなさい。なみだ…、出てきちゃった。」
「はは…、そっか、そっか…。」
恭子の顔見て、そして今度は顔を空に向けて、そしてまた恭子の顔を見て、
ズボンのポケットから、
「はい、拭いて…。」
涙で濡れた頬を右手で拭いながらの恭子に…。
「そっか、そっか…、恭子ちゃん、男の人とこうやっているの…初めてかぁ~。」
「ごめんなさい。涙なんか…流しちゃって…。」
「だいじょうぶ、だいじょうぶ。俺の方こそ、気付いてあげなくって…ごめん。」
「もん…ちゃん…。」
「あっ、…でも…、誤解しないでよ。俺の場合は、女性と一緒の時があるって、言っても、妹がいるから…。」
「妹…さん…???」
「うん。」
そして自分の膝より少し上の方へ腕を伸ばして…、
「こ~んくらいの女の子がいる。俺の姪っ子。」
「姪っ子…さん…???」
「うん。つまりは俺の妹…、シングルマザー。」
「えっ!!!」
「妹が大学時代に結婚を約束した人がいて…。もうその頃には妹のお腹の中には既に…。で…大学と卒業と同時に結婚。…は…良かったんだけど…。」
「…だけど…???」
「いつのまにか…旦那の方が…妹と子供を置いて…。」
「えっ…えっ…!!!…もしかして…。」
「そっ、その…もしかして…。旦那の整理をしていたら…、引き出しの中に…旦那の印鑑が押された離婚届…。一切消息不明。」
「そんな…。」
「あっ…、ごめんね。折角ふたりで会ったのに…、こんな話しして…。」
「ううん…。」
首を振る恭子。
「俺たち…、両親…いないから…。」
「えっ!!!」
「だから…、妹と姪っ子、いっつも会ってる。」
「そ…う…、だったんだ…。」
「さっ、どこ…行こうか…。」
「うん。じゃ…。」
ベンチから立ち上がる夏輝と恭子。




