恭子と玲子 vol.121 僅かに3秒ほど…。
「俺…、部屋戻って、寝るわ。」
「あ、ああ…コウちゃん。コウちゃん…???」
そのまま椅子を引いて立ち上がり恭子の後ろを…。
「どうしたの…コウ…、わっ!!!」
思わず浩二の右袖を掴んだ恭子。
その瞬間、椅子の後ろ側の脚が絨毯に引っ掛かったような形になり、
掴んだ浩二の右袖から指が離れ恭子の両足が床から離れて椅子が傾いた。
そのまま恭子の体が椅子に乗ったまま床にドテッ。
「恭子!!!」
「痛った~~~。」
咄嗟に恭子の体を抱き、恭子を立たせるかと…、その時。
恭子も自分で立ち上がろうと顔を上げた瞬間、
自分の顔の前にあった浩二の顔とぴったりと…、
そして偶然にも浩二の唇に恭子の唇が重なる。
その時間、僅かに3秒ほど。
いきなり恭子の目が開く。そして唇が離れる。
そしてすぐさま床にひざまずく恭子。
涙を浮かべて。唇に右手を当てて…。
浩二…、
「…ご…、ごめん…。…恭子。」
「……。」
「お…、おれ…。」
「……。」
「部屋に…。」
「…どうしよ…。」
「えっ…???」
「どうしよ、どうしよ…。玲子…。」
「えっ…???」
「れ…玲子…、コウちゃん…、好きなのに…。」
「どうしよ、どうしよ…わたし…。どうしよ。」
「きょ…、恭子…。」
「コウ…ちゃん…。わたし…。」
「ご…、ごめん、恭子。俺も…咄嗟の事で…。どうして…、こんな…。」
そう言いながら恭子の肩まで身体を下ろして浩二。
「恭子。」
恭子の左肩に自分の右手を当てて、
「ごめんな、恭子。」
わずかな沈黙の後に、ようやく顔を上げる恭子。
瞳を涙でぐしょぐしょにさせたままで…。それでも…、
「ううん、コウちゃん…、何も悪くないよ。」
そう言いながら顔を横に振る恭子。
「うん。そっか。恭子、恭子は良い子だ。」
そして恭子の頭を撫でる浩二。
「今のは…、仕方ないよ。俺だって…まさか…。」
「そう…だけど…。」
ゆっくりと恭子の体を支えながらベッドに座らせる浩二。
「明日から本格的に始まるんだ。もう寝よ。」
「うん…。」
「じゃ。」




