中編
翌朝、またひどい倦怠感で起き上がれない。
しかし、幸福感に満たされている。
またシーツ汚しちゃったな。
やっと起き上がれた俺は、とりあえずシーツを洗濯し、ベランダに干してから仕事へ向かった。
職場の同僚かつ友人に、あの夢の話をしてみた。
もちろん、毎朝下半身がぬれている話は隠して。
話を聞いた友人は一言、「お前どんだけ欲求不満なんだよ」
俺って、欲求不満なのか?
確かに彼女もいないし、これと言ったストレス解消法もない。
自分では、一般男性より性欲は弱いと思っているのだが。
仕事帰りにドラッグストアに寄った。
俺は勇気を振り絞って、大人用のオムツを購入した。
毎朝シーツを洗うのは面倒だ。
レジのお姉さんも、まさか俺が履くとは思ってないだろう。
明日は休日、アラームに起こされなくて済む。
思う存分、夢を楽しむぞ。
ウキウキしながら、俺は家路を急いだ。
◇◇◇
目が覚めると、昼12時を回っていた。
昨夜も最高だった。
寝ている時間が長かったからか、いつも異常に体がだるい。
しかし今日は休日、焦ることはない。
オムツのおかげで、下半身の不快感もない。
1時間ほど夢の余韻にどっぷり浸かり、ゆっくりと体を起こした。
昼ごはんでも食べに行くか。
俺は近くのショッピングモールに出かけた。
遅めの昼食をとり、モール内の楽器店に向かった。
中に入るのは初めてだ。
さすがにグランドピアノは置いてないか。
俺は電子ピアノの椅子に座り、鍵盤に指を乗せた。
ピアノを弾くのも初めてだ。
いくつか音を出してみるが、夢で聞いた音とは違う気がする。
電子ピアノでグランドピアノの音を再現するのは不可能なのか?
しかし、数分鍵盤を叩き続け、近しい音を見つけた。
夢のように繰り返し同じメロディを弾いてみる。
やはり夢のようにはならない。
ふと、周りがザワついていることに気づく。
顔を上げると、店内の客がいかにも不愉快そうにこちらを見ていた。
子供が「怖い」と泣き出す始末。
俺はそそくさと、その場を後にした。
やっぱりあの音階は、聞いていて気持ちがいいものではないと、改めて思い知った。
帰宅後、早々に入浴と夕食を済ませ、18時には床に着いた。
さすがに早く寝過ぎたようで、深夜2時に目が覚めた。
いつもの夢からのいつもの目覚めの倦怠感。
これで二度寝をしたら、再びあの夢が見れるのだろうか。
再び瞼を閉じると、数分で、また意識をを失った。
しかし、夢は見なかった。




