後編
あの夢は、1日一回しか見れないのか?
それとも、何か他に条件があるのか?
わからないが、朝起きた時の開放感というか、幸福感が今朝はなかった。
まさか、もう2度とあの夢を見られなかったりしないよな?
そんな不安を抱えながら、仕事へ向かった。
仕事中も不安でソワソワしてしまい、どうにも集中できない。
早く帰ってまたあの夢が見られるのか試したい。
結局、その日の仕事がなかなか進まず、残業をするはめになった。
帰宅したのは20時頃。
俺は着替えだけ済ませ、すぐさまベッドに倒れ込んだ。
仕事の疲れもあり、すぐに眠りについた。
しかし、夢は見なかった。
◇◇◇
翌朝、よく寝たはずなのに気分は最悪だった。
どうして、どうして夢を見れなくなった?
焦る気持ちと不安で、冷静ではいられなかった。
仕事中、友人が声をかけてきた。
「お前すごい顔してるぞ。何イライラしてんだよ」
「別に」
「いや、ずっと貧乏ゆすりしてるの気づいてる?あきらかに様子おかしいだろ。なんかあったのか?」
「なんでもねーよ。ほっといてくれ」
「なんだよ、その言い方。人が心配してるのに」
「うるせー!なんでもねーって言ってんだろうが」
社員の視線が集まる。
俺はトイレに逃げ込んだ。
何やってんだ俺は。
こんな精神状態じゃ、仕事なんてできない。
あの夢さえ見られたら、あの夢を見ないと俺は、おかしくなっちまう。
その後、上司に体調がすぐれないと伝え、早退させてもらった。
帰宅し、速攻寝てみる。
が、気持ちざわざわしてなかなか眠れない。
寝れないことに、さらにイライラが募る。
その時、どこからかピアノの音が聞こえた。
このメロディは、あの夢のものだ。
まだ俺は眠っていない。
体を起こそうとするが、力が入らない。
まるで、金縛りにかかったように。
そのうち、家の中からずるずると何かを引きずる音も聞こえ出した。
まるで、ドレスを引きずりながら歩いているような音。
その音は、俺の寝ているベッドの傍で止まった。
ピアノの音が大きくなる。
脳がしびれ、ふわふわしてきた。
これこれこれだー。
夢と同じ快感が襲う。
いや、夢以上だ。
ベッドの脇に立つ何者かが、俺の顔を覗き込む。
白いドレスが、視界の隅に映る。
そこで俺の意識は途絶えた。
◇◇◇
今日未明、都内アパートにて、30代の男性の遺体が発見された。
男性はベッドに横になった状態で亡くなっていた模様。
襲われた形跡はないが、男性はとても幸福に満ちた表情を浮かべていたという。




