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引きこもり令嬢(三十歳)の再起  作者: 池中織奈


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51.久しぶりの王都 ⑤

7/25 三話目

 陛下はオタリー様の様子を聞くと痛まし気な表情を浮かべていた。

 私はオタリー様がそのように私を危険視する必要はないとは思っている。私は王妃の座を狙っているわけでもなければ、オタリー様に対して何かをしようなんて欠片も思っていない。

 でも幾ら私がそうは言っても、オタリー様からしたら信じられないのかもしれない。



 王族や貴族の中には、権力を追い求める人は沢山居る。それこそ私が何を言ったとしても王妃の座を求めないことを信じてもらえないかもしれない。ただそれでも……私は説得はしたいとは思う。

 このままオタリー様への抑制を求めるだけならいくらでも出来る。ただ個人的にはきちんと分かってもらいたい。



 私は甘いのかも。

 それでもそのまま誤解されたままというのは嫌だ。



「王妃には今、休養してもらっている。ひどく取り乱していて、君のことを警戒しているようだ。私の方からもマルグレッタが王妃の座を狙ったりすることはないと告げているのだが……、どうやら信じてもらえなくてね」



 陛下は困った様子を浮かべている。

 陛下とオタリー様は、夫婦である。それに側室なども陛下は持っていない。それこそ陛下がオタリー様を大切に思っている証であると思う。




 ……どうしてそれだけ特別にされているのにオタリー様は心配しているのだろうか。陛下から選ばれた存在なのに。

 王妃という立場で、貴族令嬢達からすると憧れの存在だ。尤も高貴で、成功した存在。

 そんな立場なのに焦っているのはもったいない。思い込んで王妃としての資質を疑われるようなことをするのもどうなんだろうなってそう思ってしまった。

 陛下も悲し気な表情を浮かべていて、そのことに関しても……ちょっとしたもやもやは感じてしまった。

 王妃という立場になれたのだから、過去のことを気にせずに生きていけばいいのにと。



「そうなのですね……。私が、直接オタリー様と話すことは可能ですか?」



 私がそう問いかけると、陛下は少し悩んだ様子を見せていた。私とオタリー様を会わせることを躊躇しているらしかった。

 直接会うことで問題が起こるのではないかとそう思っているんだろうな。



「……いいのかい?」

「ええ。構いません。もしかしたら私がオタリー様と会うことで逆効果にはなるかもしれませんけれど、私は対話はしたいです。もちろん、許可をいただけるならですが」



 陛下の言葉さえも聞かないのならば、私の言葉だって聞いてくれないかもしれない。

 そのことは十分に承知している。私はオタリー様は立派な王妃で、私のことなんて気にする必要はないと考えている。

 私のことを排除しようとしたのは軽率な行動だし、その点は問題ではあるが。

 だから問題はないのだと、それを示したい。

 私はそう思っている。




 そもそも出来ることをやった上でどうしようもないのならば仕方がないけれども、そうじゃないなら出来ることはしたい。

 このままオタリー様が真っ当な道へ戻ってくれたらいいな。

 それが一番だけど、どうだろう?

 それかしばらくの間、お休みしてまた王妃として歩み出すでもいいし、どうにでもなるのだから。



「それならばお願いしたい。君と話したらオタリーも分かってくれるかもしれない」

「……もし分かってくださらなかった場合はどうなりますか?」

「良くて幽閉になるだろう。今回の件を踏まえるとその可能性も高いだろう。マルグレッタは運よく守られていたが、もし他の者にもこういった依頼をするのならば危険だ」

「……そうですね」




 私は運が良かった。魔法を使える才能があって、お兄様が護衛をつけてくれていて……だからどうにか出来ただけ。そうじゃなかったら私は命を落としていたかもしれない。

 今回の件が初めてなんだろうか?



 そうじゃなかったら、流石に擁護のしようもないな。そのあたりも話していたら分かるだろうか。

 私の存在がオタリー様の心を乱しているのは少しだけ申し訳ない気持ちにはなる。陛下との夫婦関係にも亀裂が生じてしまったのは間違いない。

 ただあれよね、学生時代は見えなかった一面が見えてきた形なのかしら。当時は下位貴族の令嬢で明るくて真っすぐな彼女に陛下は惹かれていたように思える。



 貴族らしくなかった。

 でも王妃として生きていくうちにオタリー様も、貴族らしく変化していったのかな。



 そう言う変化は仕方がないものだ。そう言う変化に伴って、私を排除するべきという思考に至ったのか。どうなんだろう?



 私はそれからリグシャンを連れて、オタリー様の元へと向かうことになった。オタリー様はもしかしたら私がいまだに陛下を慕っていると思っているかもしれない。あの頃の私は陛下に執着していたのだから。

 それもあって私を排除すべきと思ったのかしら?

 なんにせよ、もう少し冷静になって考えてもらわないといけないわ。



 王妃という立場を持つ方がそのようなことをしでかしているのは大問題だもの。

 この国の一国民として、しっかりしてもらえるようにちゃんと話そう。分かってもらえたらいいな。


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