49.久しぶりの王都 ③
王都に辿り着いてから数日の間、私は比較的のんびり過ごせていた。特にこれといって問題は起きなくてほっとした。
王都に滞在している昔の知り合いには会ったりもした。公爵令嬢として輝いていた頃の私とは違うけれど、受け入れてくれる人に会えるとなんだか嬉しい。
変化している姿を見ても、受け入れてくれる人が居るって凄く心強いことよね。自分はなんて恵まれているのだろうかと胸が温かくなった。
――リグシャンのことは恋人としてきちんと紹介をした。喜んでくれる人ばかりでにこにこしてしまった。
それに伴い、オタリー様や陛下のことは聞いた。
オタリー様はグベルド様から聞いた通り、私という存在と比べられていたらしい。逆に私が社交界から完全に姿を消していたこともあってそのことで幻想を抱かれていたようだ。
マルグレッタ・ミレハーユならば、もっと立派な王妃になれたのではないか。
……そんな嫌な囁かれ方がしていたらしい。買いかぶりすぎだ。私は確実に敗者で、つい少し前まで引きこもっていて。だからこそ実際に王妃として長い間動いていたオタリー様はとても立派だと思う。
というか、私はやっぱりそうやって人の価値を比べることに関してはあんまり好きじゃないなと思ってしまった。
私はそこまで立派な人間じゃない。
どうしようもないほど駄目人間だとは自分では思っていないけれども、それでも……実際はそうではないのだからもっと皆、現実を見て欲しいなってそういう気持ちでいっぱいだ。
そうやってのんびり過ごしつつ、王宮にやってくる日がやってきたので私達は早速赴いた。
久しぶりの王宮。
昔訪れた時とはまた違う感覚。前世の記憶を思い出したからこそ、余計にワクワクした気持ちになった。
前世だと実際に海外に行くこともなかなかなかったからなぁ。
もし許可が出たら王宮内を見て回ったりしたいかも? ……って、観光地ではなく実際に王族が住んでいる場所なのだからそんな観光気分では駄目かもしれない。
私ははっとした。
ちゃんと自重をしなければならないの! それにしても白亜のお城っていいわね。周りが塀に囲まれていて外敵を寄せ付けないようにしている。
私達が王宮の中へと入る時もきちんと検査された。魔法って便利だわ。許可をされずに敷地内に入ることは基本的に無理だろう。ただ緊迫した関係にある他国は密偵を忍ばせようとはしているかもしれないけれど。
この世界は、前世よりもずっと危険だ。命が軽いし、私も公爵家に産まれたから他人事ではない。
……王族として生きていく陛下達は、責任も負わなければならなくて大変だろう。
リグシャンは緊張した様子だった。冒険者として様々な経験をしているとはいえ、王宮に赴いたり、王族に会ったりすることがなかったからだろう。そんな様子のリグシャンを見ていると、可愛いなと微笑ましい。
年下でもリグシャンって基本的には此処まで緊張することはない。だからこそ、こういう姿を見ると嬉しい。
やっぱり恋人の色んな姿はみたい。
もちろん、恋人とはいえ他人ではあるから分かり合えない部分は当然ある。それでも私はリグシャンの色んな一面を知りたいとは思っている。様々な一面を知った上でも一緒に居られるのが一番良いな。私はリグシャンの知らない一面をもっと知ることが出来たら嬉しいのだ。
「リグシャン、緊張しているなら手を繋ぐ?」
私はくすくすと笑いながらそう言った。
「大丈夫だ。……王宮で手を繋いでいると目立つだろう」
「ふふっ。目立ったとしても仲がよろしいのねと微笑ましく思われるだけだわ。流石に陛下の前では繋いだままは難しいけれども道中なら問題ないわよ」
そんなことを気にしなくていいのに。……私がリラックスしすぎなのかもしれないけれど、多分大丈夫。
国王陛下という立場は忙しいので、すぐに会えるわけじゃない。一旦案内された部屋で待つことになった。
その場に居る侍女も見知った顔がちらほらあって、私が声をかけると笑みを見せてくれた。
ただ気まずそうにしている子もいたけれど。
私が王妃になるって思っていた侍女も多いだろう。それもあって戸惑いもあるのだろうな。
私が今更こうして王宮にやってきたこと。
その隣に恋人がいること。
全く気にした様子を見せずリラックスしていること。
それらも驚いているのだろうな。想像していたような落ちぶれ方をしていなかったこともきっと驚いている人も多い。
私はとても幸せに生きていて、生活に満足していると示せるのは良いことだ。
「リグシャン、このお菓子、美味しいわよ」
「ああ」
「やっぱり少し緊張しているのね? ほら、あーん」
緊張しているリグシャンの口元に用意してもらったクッキーをもっていく。いきなりあーんをされて驚いた様子だったが、リグシャンは本能に従って食べていた。
しばらくリグシャンの緊張をほぐすためにもそう言うやり取りを続けていた。その後、少しして陛下の元へ向かった。




