47.久しぶりの王都 ①
7/24 二話目
「王都には久しぶりに来たなぁ」
「リグシャンも? 私も王都に来るのは随分久しぶりなの」
王都は記憶の中にある通り、とても栄えていた。だけどかなり久しぶりの来訪なので、違いが多々ある。もちろん、変わっていない部分も沢山あるけれども……、その違いに心躍った。
引きこもった頃の私は絶望していて、どうしたらいいか分からなかった。外に出ることに怯えて、屋敷の外にもでてこられなかった。
――だから、私は王都にはもう二度と足を踏み入れられないだろうなと漠然と思っていた。自分が外に出たり、前に進むことが出来るなんて想像もしていなかった。それなのに諦めていた私が今、こうして王都に立っている。
感慨深くて、不思議な感覚。
「マルちゃん、どうした?」
「王都にまた来ることになると思っていなかったから。私、凄く頑張ったんだなってそう思ったの」
自分の頑張りは、私自身で認めてあげたいなとも思った。
だって私が認めてあげなかったら、駄目だと思うの。幾ら頑張っていて、周りから認められたとしても、自身を否定していたらもったいないなとも感じる。時々落ち込んだり、ネガティブな気持ちになったりすることは当然あるけれど、ずっとだったら疲れてしまうものね。
「うん、マルちゃんは常日頃から凄く頑張っていると思う」
「ふふっ、そうよね! 実家に居た頃のことを考えると、私もめまぐるしい変化をしているわ」
ちなみにだけど、王都へは公爵家のつけてくれた護衛たちも一緒だ。
家族は別で王都入りすることになっている。それにしても馬車の中から見ているだけでも、見慣れないお店も沢山ある。
引きこもる前も、王都を歩いたりは中々していなかった。私も箱入りの公爵令嬢だったし、お忍びでお出かけをするのもなかなかしていなかった。
安全面を確保できている状態だったら、リグシャンと一緒にデートもしたいかもしれない。だって王都に来る機会なんてそこまでないもの。
陛下からの呼び出しは、危険はないってお父様達が言っていた。
寧ろ陛下はオタリー様の私への襲撃命令を止めてくださっている方だ。私は王妃に選ばれることはなかったけれども、陛下とは仲違いしたわけじゃない。
私の心が折れて、引きこもって、貴族令嬢として生きていられなくなっただけなのだ。
それに昔の陛下を知っているから、あの方が私に対して何かをしようとするとは思っていない。
だから安心はしている。
ただオタリー様の暴走はもしかしたらあるかもしれないから、そのあたりは警戒しているわ。
オタリー様が何もせずに大人しくしてくれればいいな。
だってこれで私への襲撃などを再度繰り返すようなら、それでその情報が広まるようだったら……王妃としての素質が問われてしまうのだ。私は別にオタリー様の立場を悪くしたいわけじゃない。
だからそんなことを考えてしまうのである。
「マルちゃん、今日はこのまま宿に向かうか?」
「ええ。お父様達が宿をとってくださっているの」
これから私が昔泊まったことのある宿へと向かうことになっている。今よりもずっと子供のころに泊まったことがある場所。
基本的に貴族やお金持ちの平民などが泊まる宿なので、それなりに高級宿だ。今の私だと少し落ち着かないかも。屋敷を出てからは平民と同じ暮らしをしているから余計にそう。
宿の従業員は、私のことを知っている人達もいて、なんだかやっぱり変な感覚だった。
お父様達は別邸に向かうって言っていた。前に泊まった時は別邸が改築作業などをしていたから、宿に泊まったのよね。
今回は別邸にも誘われたけれど、宿に泊まりたいって私が希望して宿に泊まることになった。
いつまでもお父様達に甘えているわけにもいかないもの! 家族はいつまでも甘えていていいっていってくれているけれど、でもそれは嫌だから。
私はもう大人。
引きこもっていた期間が長かったから同年代の人達ほどは人生経験が少ないかもしれないけれど、それでも自立することが目標なのだからちゃんとするの。
お父様達は宿の料金も払ってくれると言ってくれていたけれども、流石に自分で支払いした。結構な額だったけれど、貯金はためているので問題はない。
たまには贅沢をするのも大事だもの!
ふかふかのベッドに寝転がる。はしたないと言われるかもしれないけれど、あまりにも寝心地が良さそうで飛び込んでしまった。
高級宿なのもあり、寝転がっているだけで気持ちが良い。
家のベッドももっと良いものに買い替えようかしら? なんてのんきにそんなことを思った。
私が王都についたことは陛下にも報告されているようで、陛下からの遣いがやってきた。
その情報収集能力も素晴らしいわよね。流石、陛下だわ! 私が陛下を褒めたらリグシャンは面白くなさそうにしていた。私の恋人は可愛いわ。




