46,.結果の表れと、不穏な出来事 ⑧
オタリー様がそんなことをするとは思っていなかったから、私は驚いた。だって向こうは王妃様だ。
貴族社会から弾かれている私にわざわざ構う必要もない。
オタリー様は明確な勝者で、私は周りから見ると敗者でしかないのだから。それなのにどうして?
私は正直言って、前世の記憶を思い出してからそこまで彼女のことを気にしていなかった。
引きこもっていた頃は、ずっと私は王妃になれなかったことを悔やんでいた。過去のことばかり考えて、鬱々としていて暗くて……。あのままだったら私はオタリー様への恨み言ばかりを言うことになってしまったかもしれない。
――でも今の私は、すごくすっきりしている。
今更オタリー様が私を狙う原因ってなんなんだろうか。私はもう王妃になることなど望んでもいないし、考えても居ない。それでもオタリー様にとって私が脅威ということなんだろうか?
王妃に選ばれて、国で一番高貴な女性として生きているのだからそんなことを気にしなくていいのに。
――そうは思っても、オタリー様にとっても私の存在って大きかったのかな。
ちなみに国王陛下達経由でオタリー様の依頼は取り下げられたらしい。当然のことだろう。余程、国のためにも暗殺をしなければいけないとかそういうことでなければそういうことがまかり通るわけがない。
まぁ、王族や貴族が政敵のことを排除したりすることは恐ろしいことだけど珍しくはない。ただあまりにもやりすぎると恨みも買うし、基本的には真っ当な国ならそればかりをやるわけにもいかないだろう。
……前世の記憶を思い出したから余計に、貴族社会って恐ろしいものだなと感じてしまう。
貴族夫人として生きている中で前世の記憶を思い出したら、色んなことを考えて思い悩んでいたかもしれない。だって前世の暮らしと、今の暮らしは全く違う。
だから今の暮らしが性に合っている。
私はそんなことを思う。
「王妃様がなんでマルちゃんを狙うんだ?」
「さぁ? 正直分からないけれど、陛下やお父様達の方で対処はしてくれているからおそらく大丈夫ね。オタリー様とはしばらく会っていないけれど、王妃として生活する中で、不安なことも多いのかもしれないわ」
リグシャンの問いかけに私はそう答えた。
王妃という立場はきっと私が想像するよりもずっと大変だ。国を背負う立場だ。元々爵位の低い貴族令嬢の身で王妃の立場になるのはかなり無理をしなければならない。
基本的に下位貴族の身分だと王族に嫁ぐことってあり得ないから。それは王妃として生きていくだけの教育がされていないからというのもある。
誰でも王妃になれるわけじゃない。
そう考えるとオタリー様は、問題は囁かれていたとしても王妃としてやっていけているだけでもかなりの努力をしたのだろうとは思う。命は狙われてしまったけれど、不思議とオタリー様に悪感情は抱いていない。
現状、満足をしているからかもしれない。
私は幸せで、オタリー様のこともそこまで気にならないというかなんというか……。
年を重ねたからこそ、私はオタリー様のことも大変なんだろうなって目で見ることが出来ている気がする。
「マルちゃん……命を狙われているのだから、もうちょっとこうないのか?」
「そうね。相手が分かったし、対応もしてもらえたからそこまで怖くはないかも。逆に誰から狙われているか分からない状況だったら恐ろしかったかもしれないけれど」
私はリグシャンの言葉にそう答えた。
オタリー様が犯人だと発覚してから、少しずつ日常に戻りつつある。警戒は当然しているけれどね。
リグシャンとは一緒には住んでいないけれど、似たようなものではある。
冒険者として依頼を受けている間は、街には居ないことも多い。私が狙われているから最近はずっと一緒にいるけれど……。離れている時間が長ければ長いほど、一緒に居ると凄く嬉しい気持ちになる。
そういうメリハリも大事よね。
ずっと一緒に居るのもそれはそれで嬉しいけれど。
「まぁ、マルちゃんが怖がってないならよかった」
「怖いっていうよりもどうしてだろうって疑問ね。問題はあったとしても王妃として頑張っているのだから、私のことを気にしなくていいのになとは思う。というか、私ってオタリー様にとって過去のことだと思っていたのに、気にされていることにびっくりしたわ」
私がそう答えると「相変わらず呑気だなぁ」と笑われた。
確かにのほほんとしすぎているのかもしれない。でも私の本心って追う言う感じなのだ。
さて、そんな会話を交わした翌日にお兄様経由で陛下からの手紙を受け取った。一度王都に来てほしいということだったので、お兄様達に相談した上で久しぶりに王都に向かうことにした。




