45.結果の表れと、不穏な出来事 ⑦
7/22 三話目
明確にプロの犯行だった。私が魔法を嗜んでいなければ死んでいたかもしれない。だけど私は魔法が使えたし、お兄様が秘密裏につけてくれている護衛たちのおかげで事なきを得た。
でも私が戦う力を持たなかったら……私は命を失っていたかもしれない。
なんて思うとぞっとした。
私は誰かに恨まれてしまっていたのだろうか。基本的には命を狙われるようなことは行っていないはずなのに……。
でもどこで恨みを買っているか分からないので、用心をすることになった。冒険者ギルドにも護衛を頼んだ。
だってこれで妥協して死んでしまったら元も子もない。私は転生をしたわけだけど、それが次も続くとは限らない。そもそも生まれ変わったら私じゃない存在になるってこと。私はまだまだやりたいことがあるの。だからこんなところで亡くなるわけにもいかない。リグシャン達を悲しませたくもないのだ。
そういうわけで私は最大限の警戒をしている。両親やお兄様達経由で情報収集をしてもらっているからそのうち発覚することだろう。
「マルちゃん、案外冷静なんだな」
リグシャンも私の傍に居てくれている。冒険者としての依頼はあまり受けていない。私のことを守りたいってそう言ってくれているから。
それに私が狙われているのならばリグシャンだって狙われている可能性も十分あるので、一緒に居てもらっている。
「今は平民として暮らしてはいるけれど、私は貴族として産まれたから。だから……狙われることも当然あったから」
私は貴族として産まれた。
公爵令嬢という立場だからこそ、私は狙われることが当然あった。私はそれだけ利用価値があったから。
貴族の子供を狙った誘拐事件なんていうのも、幼い頃に起こっていたっけ。
お父様達がちゃんと対応していたから、私は危険な目に遭うことはなかったけれども……そう言う危険は王族や貴族にはつきものだ。
「そうなのか。でも怖くないか?」
「怖いけれど……お父様達ならすぐに誰が私を狙っているか調べてくれると思うの。どういった理由なのかは分からないけれど……。少なくとも今の私には心当たりはないのよね。もしかしたら過去の因縁などが起こったのかなってそんなことは考えてしまうわ」
今の私を殺したいほど憎んでいる人、邪魔だと思っている人。それが居るとは想像が出来なかった。
だから過去の――自分は無敵だって思って行動していた頃に恨みを買ったりはしてしまっているのかも。
……でも思い起こす限り、そこまでの行動はしていなかったつもりなんだけれど。
「恨みかぁ。マルちゃんが誰かから憎まれるとか想像出来ないけどな」
「十代の頃の私って、自分のやりたいことを優先して周りのこととか思いやること出来ていなかったの」
思いやりが足りなかった。
それは紛れもない事実。誰かに優しくしようとか、そう言う感情もなかった。恋に一生懸命で、それ以外のことなんて考えていなかった。
今の私は貴族社会に復帰する気はないし、社交界に出る気もない。だから昔の知り合いたちと関わることって少ない。だから、こうして平民として過ごしている私にそこまで関心を持つ人ってあまりいないとは思っている。
でもどうなんだろう?
もしかしたら知らないうちに誰かに対して酷い真似をしてしまったのかもしれない。そう思うと少しだけ恐ろしい気持ちにはなる。
生きていくのって、人付き合い面だと不安になることが多い。些細な行動で誰かを傷つけたりとか、嫌な思いをさせたりしてしまうことってある。それを考えると誰かと接することに躊躇する時ってやっぱりあるわよね。
まぁ、今の私はそういうの気にせずになるべく生きていこうとは思っているけれど!
「そうやって自覚をしているのならば大丈夫だと思うけどな。少なくとも俺の知っているマルちゃんは周りに迷惑をかけたりしていないし」
「今は色んな経験をしたからよ。そうじゃなかったら人に迷惑をかけまくったりしていた気はするわ」
私があのまま王妃になっていたら、自分の立場や国を守るための責任とか……色んなことを考えなければならなかった。
王妃じゃなくて、公爵令嬢としてどこかの貴族に嫁いでいったとしてもそうだ。
でも今の私はそういうことを考えずに済む立場だから、楽なのかもしれない。やっぱり私は周りに恵まれていて、だからこそ今、こうして暮らせている。
ただ、もし違ったらと考えると大変だっただろうな。
私は今の私が好き。今の暮らしが好き。
だから引きこもってよかった……っていうのは違うかもしれないけれど、今の道を選べてよかったなとは思っている。
この暮らしをのんびりと続けられるように……命を狙っている人達のことを早くどうにか出来ればいいなとそう思った。
――それからしばらくしてお父様達から連絡が来た。私の命が狙われていた問題はもう解決したらしい。依頼主は王妃であるオタリー様だったと聞いた。




