44.結果の表れと、不穏な出来事 ⑥
7/22 二話
私とリグシャンンが恋人同士になってからの日々は、そこまで変わったわけじゃない。明確に恋人になったからこその、違いもあるわけだけど。
何だかむず痒い。
なんだろう、私、婚約者も恋人もいたわけじゃないのよね。あくまで婚約者候補だっただけで、そう言う人が居たわけじゃない。
……リグシャンより私の方が年上なのに、全くもって余裕がなさすぎた。
なんていうか、ちょっと恥ずかしかった。リグシャンには可愛いなんて言われたけれど! でも年上の余裕とかそういうの出せないの。
あとは私がリグシャンと恋人になったことでがっかりしている人はそれなりにいた。それは男女問わず。……私はともかくとしてリグシャンって将来有望な冒険者だしね。本人が高位ランクになると面倒そうって自制しているだけで強いし。
それにしても獣人って、恋人になるとやっぱり愛情がすごく重い。前世でも獣人が出てくる作品ってそういうのが多かったけれど現実でもそうらしい。
……私もすれ違いとかをするほど若くもないし、素直に自分の気持ちは伝えるようにはしている。
けれど、なんだろう、これ、バカップルみたいになっていない?
嬉しいけれどね? ただもういいやと私もはっちゃけて、割り切った。だって仲が良い姿を見せるのは悪いことじゃないもの。バカップルでもいいわ。うん、そう思いましょう。恥ずかしいと思っているからこそ、駄目なのよ。
ラーリーナのように療養が必要な方というのはそうそう多くはないから、その後はあまりきていない。
街の中で少し落ち込んだことがあった人の相談室みたいにはなっていたりする。あくまで私に出来ることって相談に乗ることぐらいだけれどもそれだけでも心が軽くなったといってもらえると嬉しかった。
もちろん、その相談内容は他の人に言うことはない。リグシャンにだって言っていない。
私一人だけでは手が足りなくなったので、教会のシスターの女性もお悩み相談は手伝ってくれることになった。
他にも街の手の空いている女性なんかも。
もちろん、無償というわけじゃなくて給与は渡している。幼い子供がいて働けない人なんかは、孤児院に子供を預けたり、他の人達で子供を見て働く体制を作った。
案外この世界、幼い子供がいると働けない場合も多いらしい。子供って凄く可愛いなって私は彼等と過ごすだけでも心が温かくなった。
沢山のことをやっているせいで常に忙しいけれども充実はしている。だけど、全て自分でやる必要はないと分かっているから気分は凄く楽だ。
私が魔法を教えた子の中で、魔法の教師のような立場になったものもいる。要するに私の代わりに魔法を習いたい子に魔法を教えてくれる立場ね。
他の場所でも働ける推薦状はもらっていたけれども、それでも私の元で働く道を選んでくれた。
それも一つの選択よね。
私が魔法を教える相手とかは、子供だけに限定しているわけじゃない。だから結果がすぐに出たりもする。
こういう少しずつでも結果が出ていくことがワクワクする。
引きこもっていて何も出来ていなかった、何物にもなれていなかった私がこんな風になれたんだなって。
自分に対する誇りが回復したというかなんというか。
……うん、気を抜くと十代の頃の、調子に乗っていた頃の自分に逆戻りしてしまいそうな気がするわ。
それはいけないわ。だってあの頃は、自分が無敵だって思い込んでいた結果、失敗したんだもの。
もっと私の心に余裕があって、冷静で居られたのならば――引きこもったりもしなかった。心が折れたりなんかしなくて、私はやっていけたはずなんだ。それなのに私は――駄目になった。
度重なる不幸。私の心を折るだけには十分だった。だから、今は無敵だなんて思わない。自信があることは悪いことではないけれど、それでも私は何かあったとしても折れないようにしたい。
例えば仮に何か失敗をしてしまったり、療養に来た人が駄目な結果になったり、リグシャンとの恋人関係が解消したり――私はそういう最悪の可能性を常に考えておいた方がいいから。
「……出来れば別れる時は、先に匂わせておいてね? いきなり別れようって言われたら私は凄く落ち込むから」
なんてリグシャンに言って、笑われたりしてしまった。
……メンヘラっぽい。私の心、こんなに弱かったからしらと思うけれど正直付き合ってしまったのならばそのまま最後まで添い遂げたいって思ってしまうの。
だからいきなり別れ話とかされることになったら私はとても落ち込むとは思う。
リグシャンにも同じことは言われた。向こうも私からいきなり振られたら落ち込むって言っていた。
人の心や未来のことなんて分からないけれど、私側からリグシャンのことを嫌いになったりすることは無いとは思うんだけどな。
なんてそんなことを考えながらも、私は穏やかで幸せな日々を過ごしていた。
――そんな中で、私は命を狙われるという予想外の出来事が起こった。




