40.結果の表れと、不穏な出来事 ②
私の教え子たちの何人かが、少なからず周りに影響を与える立場になったりしている。それは本人たちの努力の結果だから、私が教えたからなんて驕った感情はない。
少しずつやりたいことが形になっていることが嬉しい。
資金も稼ぐことが出来たのもあり、療養所を作ってみる。
これは私のように社会復帰が難しくなった人が、立ち上がるための施設だ。私は運よく前世の記憶を思い出せて此処まで立ち上がれたけれど、そうじゃない人も当然居るのだから。
両親やお兄様達の力を借りて、もし困っている知り合いが居たら声をかけて欲しいってお願いした。
実績も何もない療養所。すぐに誰かが来るわけでもない。そもそも前世よりも精神的な病や引きこもりに対する理解がこの世界は低い。正直ずるずる引きこもっているだけの余裕などない人ばかりだから、結果として自ら命を絶つ人も居なくはない。
そう言う人たちを減らせるように、私と同じように立ち上がれるようにはしたい。そもそも一度の失敗で人生が全て駄目になるなんてもったいないと思うしね。
そういうわけで作った療養所は、しばらくの間は誰もやってこなかった。ただ昔の友人達経由でまず最初のお客さんがやってくることになった。
――まだ十代で、もうすぐ学園に入るぐらいの幼い少女だった。
なんでその年頃の少女が療養が必要なぐらい追い詰められているのだろうかと凄く不思議だった。
事前に教えてもらった情報によると、男爵令嬢らしい。貴族の中でも下位の身分だ。それでいて金銭的な余裕もそこまでない家だとか。
だから平民と対して変わらないような暮らしをしているらしい。
平穏な暮らしをしてたものの、王女に何故か気に入られてしまったんだとか。――王女というとオタリー様の娘か。
オタリー様は子供達のことを可愛がって、大切に育てているとは聞いているけれど……。
どうやら悪気はないらしいけれども、王女の行動により迷惑を被っているんだとか。
……そもそも王族や高位貴族の行動って気を付ける必要があるのよね。そこで下手な行動をしたら、大変なことになる。
私も学園に通っていた頃、そういう付き合い方を失敗してしまったりしていたなと思い出した。
私自身はそんなつもりはなくても、周りが勝手に動いてしまった。
そういうことって幾らでもある話だ。自分がそれだけ影響力があるのだなって知って、あの頃の私は自信満々に「自分が間違えるわけない」と自分の思うがままに行動していたっけ。
大きな問題には繋がったことはなかったし、お父様とお母様は何かあった時にはちゃんと私を叱ってくれていた。
それって恵まれていたことだった。
男爵令嬢の子は、王女に対して思う所があってあまり関わりたくないと思っているようだった。
それでも身分差があるから断れないのだと。
これで王族と仲良くすることを利用しようという性格だったら、まだ良かったのだろう。だけどその子は王族と関わることに怯んでしまうような子だったらしい。
王族から関わってこられていることで、周りの環境も変わって、それこそ王女の友人という立場を奪われたと妬まれているようだ。
そういうところはちゃんとしておかないと、こういう風に人のことを潰してしまう要因にはなり得る。
男爵令嬢もどうしたらいいか分からなくて、心が追い詰められている状況らしい。
「マルちゃん、療養に来る子の事情、俺も読んだけれど大変そうだな」
「うん。大変だわ。王族との関わり合いって貴族は大変なのよ」
リグシャンは療養所も手伝ってくれることになっている。彼は療養に来る子の情報を言いふらしたりはしないだろうなと分かっている。
それにしても療養に来る子の情報に関しては、取り扱いをきちんとしないとならないわね。
こういう事情って周りに広まることを良しとしない人ばかりだろう。
「王族か。俺にとっては雲の上のような存在だな。貴族も大変だ」
「今の私にとってもそうかも。私も王族とは関わることはもうないだろうしね」
私はこの街でやりたいことをやりつつ、王族や貴族社会とは関わる気はない。だから王族と顔を合わせることもないだろう。
それにしてもこれから療養に来る子に対して、私はどう接したらいいだろうか。何を言ったら、その子のためになるだろうか。
王族との付き合い方を説く? それともこういう風に受け流せばいいとか、そういうのを伝える?
それとも貴族として生きる道以外を示す?
この国に限らず、別の道を選ぶのもありといえばありよね。
でもそれって結局私がこうした方がいいのではないかとか、そう言う風に考えているだけだから――本人の意思を一番大事にしないと。
私は療養に来る子のことを考えて、色んな準備をすることにした。彼女が療養に来る間の生活費なども受け取る形になるから、その金額に見合った働きをしたい。




