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引きこもり令嬢(三十歳)の再起  作者: 池中織奈


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38.理想を形にしていく ⑧

 リグシャンはそれから私への気持ちを隠さなくなった。……とはいっても元々から勘づいている人は勘づいていたみたい。私は全然気づいていなかったのに。

 特に獣人たちからすると、よく分かったらしい。



 そもそも獣人って、気になる異性以外の傍にはあんまり近づかないらしい。……いや、確かによく考えてみるとリグシャンってそこまで女性と仲良くはしていない。不愛想というわけではなくて、それなりに周りの人達と仲良くしているけれど確かに私以外とはそこまで距離をつめていないかも。

 そんなことに気づいて凄く恥ずかしくなった。



 リグシャンが私のことを好きなことを知っている人達には微笑ましいものを見るような目で見られて、見守られている。



 私より年下の知り合いも、そう言う目で見てくるんだから恥ずかしい。とはいえ、嫌なわけじゃない。




 ……周りの人たちは、私の幸せを望んでくれているんだなってぽかぽかした気持ちでいっぱいになる。

 周りの人たちが私のことを好きでいてくれていることて、嬉しいことだから。

 恋愛をしようって感覚にはなっていない。ただリグシャンが私のことを好きでいてくれているのだから、真剣に考えたいなとは思っている。



 その真面目な気持ちに対して、適当にあしらうなんてことはすべきではないのだ。というか、私はそんなことはしたくない。

 ――年下だからって、その気持ちを本気じゃないなんて勝手に決めつけたりしてしまったらきっと私は後から後悔するから。



 ……リグシャンは私がうだうだ悩んでいて、中々そう言う気持ちになっていなくてもそれを承知の上で私のお仕事のお手伝いをしてくれた。

 魔物討伐なんかも、いつも一緒だった。というかリグシャンは私と一緒に魔物を倒しにいったりするのが好きみたいだった。

 彼は私の魔法を見るのが好きだと言ってくれた。



 いまだにトラウマから、攻撃魔法は綺麗に使えなかったりする。トラウマはまだなくなっていなくて、私は引きずり続けていて、まだまだ全盛期の頃と比べたら程遠い。

 いつか、彼に私の最高の魔法を見せたいな。



 そんな気持ちもわいてきた。だって私の……昔よりも粗のあり、発動するまでに時間のかかる魔法をキラキラした目で見てくれる。



 ……というより私がちょっと失敗しても、リグシャンは受け入れてくれる。

 この街に来た頃の私も、痩せて以前のような美しい姿をした私も……態度が変わらない。いや、寧ろ甘くはなってきているけれど。

 でもそれって、出会った頃から少なくとも私のことを好意的に見てくれていたっていう証なのだ。



 恥ずかしいけれども、嬉しい。

 なんだろう、私の全てを肯定されているようなそんな感覚にはなった。

 自分のことを認めてもらえて。ちょっと至らない自身のこと含めて受け入れてくれる。



 それは心地よいものではあった。恥ずかしいし、むず痒い気持ちにはなるけれどもそんな態度に背中を押された。

 私は過去の失敗や引きこもりの経歴があるからどうしても暗い感情で心が支配されてしまうことがある。




 不安だったり、心配だったり……。

 それでもそういう気持ちが少しずつ薄れていっているのは分かった。引きこもっていた頃はずっと暗い感情ばかりだったのに。




 ――今の私は、本当に凄く前向きなのだ。



 凝り固まっていた考えが、とけていくような、そんな感覚なのかもしれない。

 それって周りの人たちのおかげなんだと思う。だから私は街の人達と深く交友を持てるようにしようと、忙しいながらにイベントに参加したりも沢山している。

 幾らやりたいことがあったとしても、周りを蔑ろにするのは違うと思うから。




 私は少しずつ変わってはいる。それも良い方に。でも街に来たばかりの頃に私によくしてくれた人たちのことも、大切にしたい。



 とはいっても時間には限りがあるから、全員平等に大切にするなんて出来はしないけれど。

 出来る限りのことを、私はやろうというスタンスなのでそれで失敗したとしてもそれはそれだって思っている。

 そういう心の余裕を持っている状態で、私は過ごせている。

 だから焦りもない。ゆったりとした気持ちで私は過ごせていけている。そんな心持で行動しているからか、予想外の成功をもたらすこともあったりして、本当に面白い。




 例えば街のイベントで私が魔法を教えた子が活躍したり、短期間だけ魔法を教えた子が目まぐるしい働きをしていたり、私が貴族としての作法を教えた子が勉学面で優秀で貴族も通う学校に行くことになったり……。




 私が理想を形にしようと動き出して、一年がたつ頃にはそういう結果が明確に出るようになっていた。

 引きこもっていた頃は、全てが不安だった。怖かった。

 こうして実家を飛び出した後も、先の未来のことでずるずる考えてしまっていた。





 だけど、今はそんな気持ちが薄れている。

 昔の気持ちに少しずつ近づいているのかもしれない。自信満々で、無敵だった頃の私。



 ――なんだろう、今の私も、何でも出来るような気がしている。

 


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