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引きこもり令嬢(三十歳)の再起  作者: 池中織奈


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34.理想を形にしていく ④

 私はボランティアをしようと思っているわけじゃない。そもそもそんな余裕もない。自分の出来る限りのことをやりたいとは思っているけれど、私の手の届く範囲は限られている。



 有料の魔法教室に関しては、リグシャンなどの顔見知りの冒険者達も来てくれた。最初は本当に自分の仕事に役立てようとしたわけではなくて、私のためだったのだと思う。ただの気遣いのためのもの。それがきっかけだったとしても私の魔法の知識や技術を後から認めてもらえればそれでいい。



 冒険者の中には学校などで学んだりしたわけじゃなくて、独学で魔法を学んだ人も多いようだ。

 私の住まうこの国は比較的、幸せに過ごせている人が多いとは思っている。ただ全ての人が教育を受けられるかと言えばそうではない。

 というか、そんな世界、まず作ることは難しい。




 貧富の差って必ず存在してしまうものなのだから。そもそも全て平等な世界ってまず無理だものね。

 難しいけれども、きちんと自分で考えた上で決めよう。もちろん、人には相談はするけれども。

 魔法の知識は、私が引き籠る前に教わったものと資格を取るために勉強したものぐらいだ。今は新たに魔法に関する本なども読んでいる。



 魔法の実演に関しても積極的に行うようにはしている。そして魔法の危険性を伝えたりしていくことにした。魔法というのは華やかに見えても危険なものなのだ。

 ただ初めて魔法を使えるようになったり、一度も失敗をせずに魔法を使えるような才能のある子だとやっぱり自分だけはそんなことは起こらないって思い込んでしまう子は居るのだ。それこそ、昔の私を見ているようだった。

 十代の頃の私は、何でも出来ると思っていた。自分が失敗なんてするはずがないって。これだけ一生懸命魔法を学んでいる自分なのだから、成功しかないのだと。

 今考えてみると凄く傲慢で、不敵すぎる。




 それでも成功しか経験していなければ、そういう思考になるのも当然のことではあった。




「あなたは自分なら失敗なんてするはずがないと思っているかもしれないけれど、そういった考え方は危険だわ。私もね、昔、なんでも出来るって思っていた。それでも大きな場でとんでもない失敗をしてしまったの」



 だからそう言う子には私の起こした失敗についてきちんと説明をすることにした。

 特に子供や年下の子だと私がそんな失敗をしてこずに生きてきたのだとそう思っている子が少なからずいるから情けない話でもちゃんと語った方がいいと思った。



「マルちゃんが?」

「ええ。そうよ。沢山の人達がいる場所で私は特別な役割をいただいたの。そこで魔法を披露することになっていたのだけれども……その時にね、普段は上手く出来ていたのに暴走しちゃったの。一度暴走して、再挑戦の機会を与えられたけれどその時には何だか魔法を使うのが怖くなってしまった。結局私は重要な大舞台の場で失敗して、周りの目にも耐えられなくて……そのせいで私、人目が怖くなってしまっていたの」

「えぇ? 全然そう言う風に見えない」

「ふふっ、今の私を見たら想像出来ないかもしれないわね。でも本当のことなのよ」




 王族や貴族も訪れる大きな祭典。それこそ他国の貴族だって来ていた。そんな重要な場で、魔法を披露する機会が私に与えられた。

 私は魔法が大好きで、自信に満ち溢れていた。だから成功させて王妃になるのにふさわしいって言ってもらいたいってそんな風に思っていた。私の未来は輝かしいものになるはずだと……私はそう思っていたのだ。


 それなのに、私は失敗した。




 暴走した時に私の膨大な魔力で周りを傷つけそうになってしまった。あの時オタリー様達が事をおさめてくれていた。……うん、思えばあればもしかしたらオタリー様の策略だったのかもね。

 もう一度の挑戦で魔法が使えなかった。



 どうして、なんでって凄くとまどって情けない姿を周りに曝してしまった。沢山の人達の目の前で私は上手く立ち振る舞えなかった。あんなことが初めてだったからその後の対応も私はまずいことをしてしまった。

 情けない姿を、みっともないふるまいを沢山した。

 後になってから恥ずかしくなって、私はどうしたらいいか分からなくなった。周りの目が怖かった。

 それでも頑張ろうとして、でもまた挫折を繰り返し、結局長い間引きこもりになった。




「……そう、なんだ」

「ええ。今は少しずつ魔法を使えるようになっているけれど、魔法を使うのも怖くなってしまっていたの。失敗したからといって今までやってきたことの全てがなくなるわけでもなくて、それでも人生って続いていくのに絶望してしまったのね。私はどうしようもないんだって勝手に思い込んで、ずっと引きずっていた。ううん、今ももしかしたらまだ引きずっているのかもしれない。私はね、あなたにそんなことになってほしくないの。私は長い時間、自分の時間を無駄にしてしまっていたから」



 私のようなことに誰にもなって欲しくない。

 あの頃の私は、狭い世界が全てで……失敗したことで色んなことが怖くなった。でも引きこもりを脱して外に出てみると、広い世界が広がっているんだなって改めて思った。



 ――だから、危険な考えは持たないようにしてもらわないと。


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