33.理想を形にしていく ③
魔法職の資格に関しては案外簡単にとれた。攻撃魔法は相変わらず以前のようにつかえなかったけれど、私がとりたい資格は戦闘能力はどうかは問わないものだった。魔法職とはいっても、戦いのものとそうじゃないものとあるからね。
私は学生時代、王宮勤めの魔法使いになることも求められていた。その場合だと戦闘職として求められていたんだろうな。私は攻撃魔法の方が得意だったから。
例えば私が挫折することなく王妃になったとしたら必要であれば魔法を使って戦っただろうな。王宮なんていう権力争いで大変な場所で過ごすことになったら、今みたいに穏やかに過ごすことも出来なかっただろう。きっと余裕もなかった。
――必要であれば国王というのは、側室を持つ者だ。跡取りが必要だから。今の所、国王陛下にはオタリー様以外の妃は居ない。
それは必要じゃなかったからだろう。ただ何かのきかっけがあれば新たに妃を取ることなんて珍しくない。
……たらればの話だけれども、私はもし王妃になったとしてそういうことがあったら凄く嫉妬しただろうな。
今の私はともかくとして、当時の私は恋愛においてかなり嫉妬をしていた。オタリー様のことを当たり前に排除はしようとしていた。貴族としての想定の範囲内での行動ではあったけれど。
王宮では私とオタリー様が比べられているらしいけれど、考えてみると私はあの当時のまま突き進んでいたらもっと悪い結果になっていたのではないかとさえ思える。やはりなんというかないものねだりしてしまっている感覚なのだろうな。
魔法を教えるとしたら、戦闘面ばかりではなく他の生活に使える魔法などを教えたいな。魔法って危険なものではあるから、使い方をきちんと教える必要はある。
そう考えると教職って大変な立場よね。前世では当たり前に義務教育があったけれど、それって責任が凄かったんだろうな。
もちろん、教え子が起こしたことの責任が全て教えた側のものとは言えないけれど……。それでも責任は少なからずあいそう。
私に教え子が出来たらちゃんと一人一人に向き合うようにしたいな。それでいて私に教わってよかったって思ってもらえるようにしたい。
うん、出来れば慕ってもらえるようになりたいかも。
そんなことを考えながら数日は実家に留まった。というかお父様達が私に屋敷に居て欲しいといったから。
なんだろう、私、家族に頼まれるとなかなか断れない。なんていうか甘えてしまう感じになってしまうなというのは反省してしまう。
きっと家族は私に何かあった時には助けてくれようとするのだろうな。ただそれに寄りかかりすぎるのは嫌だからちゃんと気を引き締めないといけないけれども。
家族と一緒に過ごして、改めてもっと頑張りたいなとも思った。
私は堂々と、誇れる自分になりたい。そうじゃないと家族の恥になってしまう。家族が堂々と私が何をしているか語れるぐらいになった方がきっといいものね!
私はそう思ってやる気満々で街へと帰った。
「おかえりなさい、マルちゃん」
「マルちゃん、家族との時間はどうだった?」
街に戻ると仲良くなった街の人達がそう言って笑ってくれて、私は凄く嬉しくなった。
それに帰ってきたなという感覚になれて、私にとってこの街はすっかり居場所なんだなとそう思った。
私にとって実家は大事な場所ではある。
ずっと育っていた場所で、引きこもっていた間も過ごしていた場所。でもこれから過ごす場所ではないのよね。
もう私は歩み出していて、すっかり屋敷が時々向かう場所ぐらいにしかなっていない。
「ただいま。家族達とは楽しく過ごせたわ。目的だった資格も取れたの」
私がそう言って報告をすると、彼らは喜んでくれた。自分のことのように喜んでくれると嬉しいわよね。
魔法職の資格を取ったとはいえ、魔法を教えるにあたってはきちんと街に申請などをした方がいいだろうからまずはその手続きを早速進めよう。
帰ってきてすぐなのに休みもせずに動いていたので、街の人達には驚かれた。もっとゆっくり休んでもいいのにと言われたけれども、やる気に満ちている私はすぐに動きたかった。
孤児院などでも教えるとして、それ以外にもし私の教えられることで学びたいものがあるのならば教えられるように整えもしたいかも。
こんなにもやりたいことがどんどんわいてくるのが凄く不思議だな。
でも今、こういう気持ちであるうちに動いた方が上手くいくこともきっとあるだろう。
うん、だから、勢いのままにやる。
そう決めた私は、街に対して魔法とか、貴族としての礼儀作法とか、何かしら知りたいことがあるのならば教える立場をやるというのを申請した。
なんだかこうやって申請待ちをする間、凄くドキドキするな。ただボランティアでやるのも違うから、お金はきちんと受け取っての形にはなるとは思う。
孤児院で職員として働きつつ教えるのは別料金はもらわなくていいだろうけれど、それ以外の人達が教えて欲しいというのならば別よね。
ただそう言う時の匙加減は難しいかもしれない。
資格を取った上でやるだから、無償は逆に問題だろうし。そもそも私がタダでなんでも教えたら他の魔法を教えている人達にとって不利益になるものね。
私は色々考えなければならないなと頭を悩ませた。




