27.少しずつ変化していく日々と、私のやりたいこと ②
自分のやりたいことって何なのか、そのことはぴんとこない。でもいつまでもこのままでいいわけではないって分かる。
だらだらなんとなく生きて行くことも問題はないだろうけれど、折角転生してこうやって頑張ろうとしているのだからこの命が尽きる時に後悔しないようにしたい。
二度目があったからといって、三度目があるかなんてわからないのだから。
私は自分のこれまでのことをぼーっとしながら振り返ってみることにする。
引きこもる前まで公爵令嬢として何不自由ない暮らしをしてきた。私の望みが叶わないことなんてなかった。自分が無敵だと思っていて、何だって出来るつもりだった。
大事な場面で魔法が使えなくて、今の国王陛下にも振られてしまうことになってしまって、いざ何かをしようとしたら全て失敗していた。
……グベルド様は私に、オタリー様が何か行ったため私の失敗がおこったのではないかと言っていた。
全ての出来事がオタリー様が要因だとは思わないけれど、いくつもの出来事にもしかしたらオタリー様は関わっているのだろうか。
あの当時、なんでこんなにも不幸なことばかりがおこるのだろうって嘆いて、悔しい思いばかりしていた。
貴族だと誰かから蹴落とされることなんて言ってしまえばよくある話だ。でも若かった私はそんなこと考えられないぐらい動揺していた。
……お母様たちが引きこもった私を引きこもったままでも許してくれたのはそういった事情もあったのかな。
その後、何回か外に出たり、引きこもりを脱しようとしたことは何度もあった。それでもそれが上手くいくことはなかった。
それから結局諦めて、怠惰に生きてきた。
ずっと何をするでもなく、目的もなく……私はもう二度と立ち上がれないんだってそう思い込んで。
お兄様が卒業後の同級生たちがどう過ごしているかを語ったこともあったな。私がそれを聞いてやる気を出すようにってそう思ったからだろうな。
確かに十代の頃の私だったら私はそう言うのを聞いて悔しいと思って、自分を奮い立たせようとしただろうな。でも引きこもって、心がぽっきりと折れてしまっていた私はそのくらいじゃどうしようもなかった。
そして前世の記憶を思い出すまでずっと私は……引きこもっていた。
前世の記憶を思い出してからはこうして平民生活をしているわけだけど、私って何が出来るんだろう?
魔法が使えるようになったなら、魔法師としての資格は取りたいかも。誰かに自分の魔法を教えたりするのもありかもしれない。私は魔法を使うことが好きだったから。貴族令嬢として学んだことも何かに使えるかな?
私は貴族に必要以上に関わらずに生きていこうとは思っているけれども、役立てることって出来るのかなぁ。
少し気晴らしをしようと一旦家の外に出る。考え込んでいても結局何かを突然思いついたりなんて出来ない。
街を歩きながら、沢山の人達に話しかけられる。
思えばこの街にやってきてから、それなりの時間が経過した。顔見知りの人達も沢山いて、すっかり私はこの街の住民なんだなってそれが嬉しい。
周りから認められていること。ただのマルグレッタという平民である私を受け入れてくれている場所。
この先、ずっとこの街で過ごしていくかって分からない。でも例えばこの街を去ったとしても私にとってここは大事な場所になっていることには変わりないんだろうな。
「マルお姉ちゃん!!」
「マルグレッタさん!!」
私が街を歩いていると、顔見知りの子供達から声をかけられる。
私が街の子供を助けたことで、街中の子供達が私に話しかけてくるようになったのだ。私が助けた子のお友達とかから話が広まって、感謝してくれているの。こうやって子供に話しかけられると嬉しいなとは思う。
前世も含めて私は子供が嫌いじゃなかった。
子供かぁ。私はもう三十も超えているし、結婚することや子供を持つことは考えていない。
ただこうして子供に好かれるのは素直に嬉しい。……何がやりたいかって分からないけれど、子供とは関わっていきたいかもしれないとは思った。
でも子供と関わっていくにしてもどういう形が良いのだろうか?
突然私が子供に関わり始めても、周りの人達から不審に思われたりするのかしら? この街には孤児院や子供の学び舎はあるのでそこを見学させてもらうとか? そういうのもありかもしれない。
平民の子供達って、貴族と違ってあまり勉強をさせてもらう機会がなかったりもするらしい。識字率も高いわけじゃない。
まだこの街は裕福な子供達が多いけれども、もっと田舎の村とかだと貧しくて大変だったりするんだろうな。
私は貴族令嬢として産まれて、税金で暮らしてきた。私はその分、義務を果たしてはいない。
……何か出来たらいいなとやっぱり思う。そして家族や友人達の前で堂々と出来る私で居たい。
今何をしているか聞かれて、答えられる状態で居たい。
私はそう思ったので、興味があることの話を聞きにいくことにした。




