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引きこもり令嬢(三十歳)の再起  作者: 池中織奈


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25.スタンピードの落ち着きと、再会

「あれ?」

「マルちゃんは?」




 ……スタンピードがおこってから、見知った冒険者達は最前線に向かっていた。



 ようやくスタンピードが落ち着きつつ、他の場所へ向かっていた冒険者達が戻ってきたわけだが、その間に私は忙しくしていて見た目は変わっていた。太っていた身体が痩せていて、どちらかというと引きこもる前のような姿にはなっている。スタンピードのことが心配で、食欲も出なかったからというのもあるけれど……。




「何を言っているんだ? これはマルちゃんだろう?」



 そう言ったのはリグシャンだった。



 彼は獣人なので見た目以外でも人のことを判断できるのかもしれない。だから彼が以前とは少し姿の変わった私に気づいたのはたったそれだけの理由なのだろうとは思った。

 それでも……私は嬉しかった。



 何だか見た目や肩書などを抜きにして、私という存在を気に掛けてくれているんだなってそんな気持ちになったから。リグシャンにとっては何でもないことなんだろうけれども……。




「ええぇええ? マルちゃんなの?」

「随分、痩せたな! 大丈夫なのか?」



 リグシャンの言葉を聞いて、私が食堂で働く“マルちゃん”だと認識した冒険者達はそれはもう驚愕していた。

 まさか私がこんなにも変わっているとは思っていなかったのだろう。

 それに私に何かあって痩せたのではないかと心配してくれているらしい。その様子に思わずくすりっと笑った。




「大丈夫よ。ありがとう。健康的になろうと思って頑張った結果だから、何の心配もいらないわ」



 寧ろ太り過ぎていた時の方が問題だったのだから痩せる分には何の問題もない。ただ不健康なほど痩せすぎるのはどうかとは思うけれどね。

 流石にそこまで無茶はするつもりはない。今の私は大分美しく変化はしているとは思うけれど、これ以上体調を崩してまで痩せる気はないのだ。




「それならよかった……」

「それにしてもマルちゃんは痩せたら印象がまた違うな。別人みたいで少しドキドキする」



 そんなことを言われて、私はあいまいな笑みを浮かべた。


 嫌な視線は向けられていないけれど、私の見た目が徐々に以前のように戻っていくことで周りの目も少なからず変わっていったのは確かに理解していた。

 特に少し前に魔法を使って二週間も倒れてしまった時にまた、痩せたものね……。




 引きこもる前の私も、引きこもっていた頃の私も、そして今の私も――全て同じ私なのになって。

 でも見えてくるものが違えば、周りの態度も変わっていくのも仕方がないことなのかもしれない。


 それにこの冒険者達だって、私が貴族の出だろうと噂されていることとかは流石に知っているだろうし。そういうのもあって久しぶりに会う冒険者達が少し私にどう話しかけようか探り探りな様子は寂しくはなる。


 まぁ、仕方ないのだけれども。


 逆に……


「別に見た目が変わってもマルちゃんはマルちゃんだろう?」


 そう言って不思議そうに他の冒険者たちを見ているリグシャンの方が珍しいなとは思う。



 獣人だと匂いなどで人を判別出来たりするものかしら? ……こうして変わらず話しかけてくるということは嫌な臭いではないのだろうな。獣人と接する場合は苦手な匂いとかも気にした方が良いのだろうなとも思った。

 それにリグシャンは私が貴族の出かもしれないと噂されていても、以前と全く変わらない態度である。




「そう言えるリグシャンは凄いな」

「俺はまだ慣れるまで時間がかかりそうだ」



 リグシャンの言葉を聞いて他の冒険者たちはそう口にしていた。



 ああ、でも獣人だからじゃなくてリグシャンがそう言う性格だから気にしないだけなのかもしれない。だって獣人でも見た目や身分などを気にする人だっているだろうしね。




「魔物と対峙もしたと聞いているけれど、それも大丈夫だったのか?」

「大丈夫よ。久しぶりに攻撃魔法を使ったから、その反動があったけれどそれぐらいだから」



 二週間も倒れてしまったことなどは、心配もかけるしわざわざこんなことを口にする必要はない。

 あれからまだ攻撃魔法は使っていない。まだ安静にしてほしいってお兄様から許可が出ないからだ。

 わざわざ魔法にも詳しい医者を寄越してくれていて、検査されている。ちゃんと許可が出てから魔法を使おうってそう言う風に思っているのだ。



「それならよかった。マルちゃんの攻撃魔法、俺も見てみたいな」

「……まだきちんと使えないから、使えるようになったら見せるわ」


 リグシャンの申し出に私はそう答えるのだった。




 私はまだまだ過去にとらわれている。だからこそ、二週間も倒れてしまった。昔のことを思い出すと苦しくもなる。けれども、私が子供を救えたことは事実で、魔法を使って倒れてしまった私のことを誰も責めることはなくてそのことにほっとする。



 屋敷を出てから出会った人々に、いつか堂々と魔法を見せられる日が来たら楽しいだろうなと思った。

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