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翌朝、ケンジは王宮の従者に依頼し、まずは自分たちをここまで送り届けてくれたザルガスの元を訪ねることにした。
案内されたのは、王宮近くにある魔族の商人が集う広場だ。そこでは、ザルガスが商人と何やら熱心に荷馬車の積載について議論していた。
「ザルガス、ちょっといいか。バタバタしていて言いそびれたが、改めて礼を言わせてくれ。ありがとう」
「おう、ケンジか。礼なんていいさ、これも仕事だ。……で、俺に礼を言うためだけにわざわざ来たわけじゃないだろ。さっそく動き出すのか? 何か獲物を見つけた時の目だぞ」
不敵に笑うザルガスに、ケンジは苦笑して頷いた。
「ああ、少し街の遺物やゴーレムを見ておきたくてね。案内を頼めるか?」
「いいぜ。この街の遺物の場所なら知り尽くしているからな」
ザルガスの案内で街へ出ると、王都アステルの特殊な構造がより鮮明に見えてきた。
路地の角には沈黙した警備用ゴーレムが石像のように佇み、広場の泉には、かつて水を噴き出していたであろうゴーレムが鎮座している。ケンジがそれらに近寄り観察すると、どれも驚くほど保存状態が良い。
(マスター、我慢できません。今すぐにでもスキャンをかけ、強制再起動プログラムを流し込みたい。回路も生きているようなので、すぐにでも復旧させられますよ)
「……ダメだ、ノア。今は見るだけだ。ここで勝手に動かしてみろ、間違いなく危険視されるぞ」
はやるノアをなだめながら、ケンジは慎重に情報を集めていく。だが、調査を妨げるものは監視の目だけではなかった。
「……ねえ、ケンジ。なんだか、どんどん人が集まってきているんだけど」
リィザが困ったように眉を下げ、周囲を見渡す。
気づけば、遠巻きに魔族の群衆ができていた。角を持つ者、翼を畳んだ者、肌の色が青白い者。彼らにとって、「人間」が街を歩き回る姿は、絶好の見世物らしい。
「人垣ができちまったな。おいケンジ、今日はこの辺にしておけ。これ以上目立つと、俺もただじゃ済まなさそうだ」
ザルガスの言葉に従い、ケンジたちは引き上げることにした。ザルガスとは広場で別れ、再び王宮へと戻る。
その日の夕食は、客室に用意された魔族の伝統料理だった。
卓上に並ぶのは、色鮮やかな根菜と、見たこともない肉の煮込み。それらからは、鼻をくすぐるスパイシーな香辛料の香りが立ち上っている。
「……いい香りね。懐かしいわ」
リィザが期待に目を輝かせながら、料理を一口運ぶ。
「ああ、本当だ。久しぶりだが、やっぱりこの味は病みつきになる」
ピリリとした刺激の後に、深いコクが広がる。魔族の料理は香辛料が多用されているのが特徴で、二人は久々の異国の味を堪能した。
「明日に備えて、今日はゆっくり休もう。ノアはさっき見た遺物の解析を頼む」
こうして王への謁見から始まった、王都アステルでの長い一日は幕を閉じた。




