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「……ところで、話を戻すが、あのゴーレムについて調べているのか?」
ゼノスは口元に笑みを浮かべ、探りを入れてくる。ケンジは肩をすくめて、それをはぐらかした。
「先ほど王にお伝えした通り、偶然ですよ。ガル・ドルナの村に放置されていたゴーレムが気になったので、少し触ってみただけです。将軍は何かご存知なのですか?」
「ゴーレムについては過去の遺物であることしか知らん。知りたければ王宮の書庫でも漁るんだな。……お前のことだ、何かやってくれると期待しているぞ」
「……買い被りですよ。では、失礼します」
ケンジが軽く会釈をすると、ゼノスは「じゃあな」と短く言い残し、重厚な足音を響かせて去っていった。
その後、案内の従者に導かれ、二人は用意された王宮の客室へと案内された。
「……さて、一息ついたな」
ケンジが椅子に深く腰掛けると、隣でリィザがどこか落ち着かない様子で自分の手の平を見つめていた。彼女は小声で「ステータス・オープン」と呟き、視界に浮かぶ数値を食い入るように見つめる。
「……やっぱり、そんなに変わってないわ」
リィザは少し拍子抜けしたように溜息をついた。
魔力の最大値が以前よりわずかに上昇しているものの、それ以外に劇的な変化は見当たらない。先ほどゼノスから「怪物」とまで評された自覚は、彼女の中には全くなかった。
(……でも、ステータスに出ない部分で何かが大きく変わっているのかしら。もしそうなら――カッセル砦で戦った騎士たちは、本当はそんなに弱くなかったのかもしれない……)
リィザはふと、レムリア王国のガストンやボルドーたちのことを思い返した。自分が圧倒できてしまったせいで実感が湧かなかったが、実は「敵が弱かった」のではなく「自分が規格外になっていた」可能性。その事実に、彼女は少しだけ背筋が寒くなるのを感じた。
(マスター。リィザ様のステータス表示が変化していないのは、既存の『枠組み』を超えた進化をしているからです。魔力供給係として限界まで鍛えられたことで魔力の揺らぎが無くなり、さらに魔法剣が加わったことで、剣や鎧にまで満遍なく身体強化の魔力が張り巡らされています。もはや単純な数値で測れる段階ではないのでしょう)
脳内でのノアの補足を聞きながら、ケンジは窓の外、暮れなずむ王都アステルの街並みを眺めた。
「俺たちは基礎鍛錬や超回復でレベルをハックしてきたが、君はステータスそのものをハックしてしまったんだ。……これまでの積み重ねの結果だよ、リィザ」
「ケンジがそう言うなら、そうなのかな……」
「それより、定期会合までまだ二日の余裕がある。その間に、この街をしっかり調べておきたいんだ」
ケンジの目は、城へ来るまでに目にした、沈黙したまま放置されている魔導装置の数々に向けられていた。
「この国に眠る遺物を今から見に行こう。王やゼノスも何やら感づいているようだが、このまま泳がされてやろうじゃないか」
休息時間は終わりだ。ケンジたちは、すでに次なる一手に向けて動き始めていた。




