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【第二部完】AIにリストラされた俺、異世界で「生成AI」を使いこなして成り上がる〜進化する相棒と共に世界をハックする〜  作者: ikura
(未定)

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15

王都アステルの二日目の朝は、昨日と同じく刺激的な香辛料の香りで始まった。

 スパイシーな朝食を口に運びながら、ケンジは今日の予定を切り出す。


「さて、定期会合まであと一日あるが……。王宮の書庫へ行って、この国の成り立ちやゴーレムに関する古文書を調べておきたいんだ」


「いいわね。私も手伝いたいんだけど……今日は別行動でいい? ゼノス将軍に会って、自分の力が今どれくらいなのか、一度ちゃんと試しておきたいの」


リィザの言葉に、ケンジは少し意外そうな顔をしたが、すぐに頷いた。昨日のゼノスの驚愕ぶりを考えれば、彼女が自分の変化を確認したくなるのは当然と言える。


食後、案内の従者にそれぞれの希望を伝えると、驚くほどあっさりと許可が下りた。


「……拍子抜けね。もう少し渋られるかと思ったけれど」


「魔王側にとっても、我々の関心事や実力を把握できる絶好の機会だと思われているんだろう。お互い様だな」


ケンジは不敵に笑い、二人は一度王宮の廊下で別れた。


王宮の書庫は、巨大な円筒形の塔の中にあった。

 天井まで届く書架には、魔族の歴史を記した重厚な革装本や、今や解読不能と目される古代の魔導回路図が並んでいる。ケンジは早速、ゴーレムの構造に関連しそうな書物を数冊選び、机に広げた。


(マスター、この『アステル建国紀』の記述……興味深いです。王都に配置されたゴーレムたちは、単なる警備用ではなく、都市の魔素循環を最適化するための『ノード(節点)』として設計された形跡があります)


「やっぱりな。あちこちに放置されているのは、各地とリンクするためか。……ノア、すべてスキャンして分析を頼む。他の交渉材料も探そう」


ケンジが静かに知識を蓄積させている頃、王宮の演習場では全く異なる「熱」が渦巻いていた。


「ゼノス将軍は急務で遅れてくるのか。……残念ね」


演習場に現れたリィザを迎えたのは、ゼノスではなく、彼に鍛えられた屈強な魔族の戦士たちだった。彼らはゼノスを倒した人間の、しかも女性であるリィザが「力試し」を望んでいると聞き、期待を隠しきれない。


「ゼノス様を倒したという実力、見せてもらおう!」


角を持つ大男が、身の丈ほどもある木剣を担いで前に出る。

 リィザは小さく溜息をつくと、魔族の子供用木剣を構えた。


「……お手柔らかにお願いします」


次の瞬間、大男の巨体が宙を舞った。

 リィザが何をしたのか、周囲の戦士たちには見えなかった。ただ、彼女が踏み込んだ瞬間に石畳が爆ぜ、次の瞬間には大男の懐に滑り込んでいた。


「……え?」


リィザ自身が一番驚いていた。

 軽く身体を動かしたつもりが、地面を蹴る脚力も、拳を繰り出す速度も、以前とは比較にならない。

(……カッセル砦の時よりも、もっと身体が軽い。魔力が、指先の先まで私の意志に従っている……!)


一人、また一人と、魔族の精鋭たちがリィザの「洗練された一撃」の前に沈んでいく。そこには力任せの暴力ではなく、一切の無駄を削ぎ落とした「最適化された武」があった。


次々と屈強な戦士たちが沈んでいく光景に、演習場が静まり返ったその時、入り口から重厚な足音が響いた。


「――そこまでだ。遅れてすまなかったな」


現れたのはゼノスだった。彼は転がっている部下たちを一瞥し、苦笑しながらリィザの前に立つ。


「こやつらでは相手になるまい。私が相手になろう」


「ゼノス将軍……。お忙しいところありがとうございます」


「構わんよ。訓練用の木剣でいいな?」


ゼノスが手近な木剣を手に取ると、リィザもまた、先ほどから使っている小さな木剣を構え直した。


「行くぞ!」


ゼノスが踏み込む。魔族特有の剛力と、百戦錬磨の剣技が凝縮された一撃。だが、リィザがそれを正面から受け流した瞬間、乾いた破壊音が鳴り響いた。

 ゼノスの持っていた頑丈な木剣が、まるで枯れ枝のように叩き折られたのだ。


「……何?」


ゼノスの目が驚愕に見開かれる。今のは技でいなされたのではない。純粋な魔力の密度と速度の差が、構造上の強度を上回ったのだ。

 周囲で見守っていた魔族たちがざわめき始める。


「ゼノス様の木剣が……?」

「いや、木剣が傷んでいたんだろう」


周囲の反応をよそに、ゼノスは折れた剣を捨て、真剣な面持ちで傍らに控える部下に命じた。


「金属製の練習剣を持ってこい。……リィザ、怪我させんように気をつけるから、いいか?」


「大丈夫です。私の木剣は折れませんので」


「それが一番恐ろしいと言っているんだ。行くぞ!」


鋼鉄の剣を手にしたゼノスが斬りかかった。リィザが木剣を使っているにもかかわらず、金属同士がぶつかり合うような鋭い音が演習場に響く。身体強化の魔力が、木剣の先端まで行き渡っているのだ。リィザはゼノスの猛攻を完璧に受け流していく。

 数合、十数合。火花が散るような激しい攻防の末、リィザがわずかに重心を沈めた。


「――っ!」


リィザの木剣が、ゼノスの大振りの一撃を下から跳ね上げる。

 その瞬間、ガキンッという硬質な音と共に、ゼノスの持つ金属製の武器が中央から真っ二つに砕け散った。


沈黙。

 砕けた金属片が石畳に落ちる音だけが虚しく響く。


「……降参だ。また武器を壊されたな」


ゼノスは両手を上げ、潔く負けを認めた。

 その言葉に、演習場を囲んでいた魔族たちは「おおおっ!」と驚きの声を上げる。だが、その歓声にはまだ、どこか「将軍が油断した」あるいは「珍しい魔法を使った」といった程度の、事態を完全には理解していない甘さが混じっていた。


しかし、武器を破壊されたゼノスだけは理解していた。

 リィザが放ったのは魔法などではない。身体強化の魔力を極限まで圧縮し、木剣という脆弱な武器で鋼鉄を折ったのだ。リィザが真剣を使っていれば、切り合うまでもなく、武器ごと叩き切られていただろう。


(……この女、本当に底が見えん。何があれば人間をここまで変えられるんだ?)


ゼノスが戦慄を押し殺して溜息をついている頃、王宮の書庫では、ケンジがスキャンを終えた古文書を閉じ、静かに立ち上がっていた。


「準備は整ったな」


(はい、マスター。王都のシステム構造、および交渉に有利な脆弱性を把握できました)


夕暮れ時、王宮の廊下で再会した二人は、互いの収穫を報告し合う。


「……明日の定期会合、面白くなりそうだな」

100話目達成できました。

ありがとうございます。

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