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「はあああっ!」
リィザが地を蹴った。強化魔法を纏ったその体は一瞬でトカゲの懐へと潜り込み、魔力で輝く剣を閃かせる。
一太刀、そして二太刀。
岩のように硬い鱗をバターのように切り裂き、リィザは着地と共に剣を鞘に納めた。二頭の「岩喰い大トカゲ」は、何が起きたのか理解する間もなくその巨体を沈ませた。
「……あ、呆気ないな」
「人間ってこんなに強いのか……」
呆然とする村人たち。しかし、すぐに我に返った子供たちがリィザに駆け寄る。
「お姉ちゃん、すごーい!」
ザルガスも豪快に笑いながらケンジの肩を叩く。
「ケンジ、魔族の将軍と一騎打ちで勝ったってのはあの子だろ。半端ねぇな!」
「自慢のパートナーですよ」
ケンジは少し誇らしげに答えながらも、視線は村の入り口へと向けられていた。
「村長さん。いつもこんな風に急に魔物が襲ってくるんですか?」
ケンジが問いかけると、杖を突いた年配の魔族が溜息をつきながら歩み寄ってきた。
「ああ……囲いの劣化していてな。石を積むのも重労働だし、かといって戦士は狩りに出ねばならん。常に見張りをつけるわけにもいかないのが、この村の悩みでな」
ケンジは少し考え込む。
「……村長。もしよろしければ、私が村の防御を強化しましょう。土魔法で強固な外壁が作れます」
村人たちはざわついた。だが、ザルガスが「こいつの言うことは信じていいぜ」と太鼓判を押すと、村長は顔を上げた。
「……お礼は何を望む、人間よ。我が村は豊かではないぞ」
「お礼は、あそこにある『石の人形』を調査させてください」
ケンジが指さした先、苔むしたゴーレムを見た瞬間、村長の顔が険しくなった。
「……失われた文明の遺物であり、村の守り神として数百年ここに座している。そう簡単には……」
「でも、お姉ちゃんたちが助けてくれなかったら僕たち食べられてたよ!」
子供たちが村長の服の裾を引っ張る。ザルガスも加勢した。
「なあ村長。こいつは魔王陛下とも渡り合った男だ。下手なことはしねえし、壁を作ってくれる恩を考えれば、少し見るくらい安いもんだろ?」
しばらくの沈黙の後、村長は折れた。
「……わかった。子供らを救ってくれた恩、そして停戦の立役者への礼儀として、調査を許可しよう。ただし、見るだけだ。持ち帰ることは断じて許さんぞ。あれはこの村の魂なのだから」
「承知しました。約束します」
ケンジは頷き、心の中でノアに呼びかける。
(……ノア、聞いたか? 調査許可が出たぞ)
((*´Д`)……はい、マスター。感無量です。ああ……、楽しみでシステムクロックが加速します……!早速スキャニングを。物理接触による深部解析のシミュレーションを。)
「落ち着け、ノア。……まずは壁の修理からだ」




