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ガル・ドルナの村は独特の「異国感」に満ちていた。
人間の村のような木造建築は皆無で、幾何学的な紋様を刻んだ石造りの住居が整然と並んでいる。
堅牢で、機能美に満ちていた。
「お、おい……人間が来たぞ」
「一緒にいるのはザルガスじゃないか?」
村の広場を通ると、魔族の大人たちは一様に足を止め、警戒と戸惑いの混じった視線を向けてくる。だが、子供たちは違った。
「ねえ、本当に肌がつるつるしてる!」
「角がないぞ! どうやって喧嘩するんだ?」
好奇心に勝てない小さな魔族の子らが、馬車の周りにわらわらと集まってくる。リィザが戸惑いながらも小さく手を振ると、子供たちは歓声を上げて飛び跳ねた。
「ははは! ここの連中はほとんど人間を見たことがないからな。すぐに慣れるさ」
ザルガスが豪快に笑いながら、村の奥へと案内する。その時、ケンジの視界に「異質なもの」が飛び込んできた。
広場の中央、村の守り神のように座り込んでいるのは、苔むした巨大な石の人形だった。
「……ザルガス、あれは?」
「ああ、あれか? 『古の守護者』って呼ばれてる代物だ。俺たちがこの岩山に住み着く前からあそこに転がってる。動くどころか、喋りもしねぇ石塊だよ。この国にはたまにあるんだ、こういう失われた文明の遺物がな」
ザルガスが事も無げに言う。だが、ケンジの脳内ではノアが激しく反応していた。
(マスター。解析を開始……。表面の風化は激しいですが、内部の魔導回路は一部が生きています。これは王都の文献にあった『自律駆動式ゴーレム』と推測します。(*´Д`)ハァハァ……。解析したい……)
ノアの声の様子がおかしい。
「……あれを直すことはできるのか?」
(解析してみないと分かりませんが、他にもあるようなので動く個体も残っているかもしれません)
ノアの警告と同時に、村の外壁付近で激しい鐘の音が鳴り響いた。
「 裏の岩場から『岩喰い大トカゲ(ロック・イーター)』が降りてきやがった! 二頭もだ!」
村の男たちが色めき立ち、槍を掴んで駆け出す。魔族の戦士は精強だが、不意を突かれたのか、村の入り口付近では子供たちが遊んでいて逃げ遅れていた。
「リィザ!」
「分かってるわ!」
リィザは勢いよく飛び出すと、子供たちを抱え、大人たちがいる安全な場所へ運んだ。
「さぁ、トカゲちゃんたち、私が相手よ!」




